視覚を越えた感覚に触れる 「美術の手ざわり―記憶にふれる」芦屋市立美術博物館 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

視覚を越えた感覚に触れる 「美術の手ざわり―記憶にふれる」芦屋市立美術博物館

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 絵画や彫刻などの美術作品を見ていると、視覚を越えて何かを感じることがある。実際に触れることはできないものの、「ざらざら」「なめらか」といった質感や、時には香りや温度を感じることができる。そんな作品の「手ざわり」には作者の思いが込められており、今日に至るまでの「時間」が風合いとなっている。そんな作品たちの手ざわりと記憶にふれる企画展が、芦屋市立美術博物館で開催中。2022年6月19日(日)まで。

芦屋市立美術博物館

 展示室には、芦屋市立美術博物館の約1500点のコレクションの中から、17人の作家の56点が並ぶ。作家によっては複数の作品が展示されており、制作時期によって変わる表現を見ることができる。

 上山二郎(かみやまじろう)の「キャフェにて」と「ラディッシュ(赤蕪)」は、1922~23年、フランス・パリに留学していた頃の作品。「キャフェにて」では筆の動きが感じられるが、「ラディッシュ」は筆の跡がほとんど見えず、絵の具を画布に染めているよう。「フラットだけど赤と白のコントラストから野菜のみずみずしさを感じられる」と川原百合恵学芸員は解説する。

 芦屋にゆかりのある作家の作品もあり、そのつながりや、作品がどのような過程で芦屋市立美術博物館にやって来たのかといった、作品が持つ記憶をたどることができる。山崎隆夫の「芦屋川」に描かれているのは、阪神芦屋駅から北を望む光景。手前に見える橋は公光橋(鳴尾御影線)で、この橋の西には小出楢重が住んだ家とアトリエがあり、東には吉原治良が住んだ家があった。吉原は若い頃、散歩中の小出とすれ違うことがあったものの声をかけられなかったという思い出があり、公光橋がその場所だったのでは、と思いを巡らせることもできる。

 吉原治良の円シリーズのひとつ「作品」は、紙(新聞紙)をコラージュしている。絵の具で描かれる円と背景に、紙という異質な素材の「手ざわり」を入れることで、円のシリーズの探求を深めている。

 このほか、ポルシェ(車)がトレードマークとなった菅井汲が、高速道路を走る時に流れていく景色とその残像、そしてシンプルな道路標識をイメージしたという「森と二つの太陽」。小出楢重が14歳の頃描いたという「ナイヤガラ大瀑布(仮称)」や、初公開となる作品も展示。川原学芸員は「作家がどのような意図をもってその技法を用いたのか。その手ざわりを作品から感じ取ってほしい。それが作品に近づく入口としてもらえれば」と話す。

 このコレクション小企画「美術の手ざわり―記憶にふれる」は、「北原照久コレクション展-おもちゃ!広告!驚きと感動と心温まる物語」と同時開催。芦屋市立美術博物館では「北原さんと同じく美術館もコレクターと言える。作品が美術館に来るまでの時間や、作品を中心につながりをもった人々の記憶にも触れてほしい」としている。

◆コレクション小企画「美術の手ざわり―記憶にふれる」
会期 2022年4月22日(土)~6月19日(日)
会場 芦屋市立美術博物館 1階 歴史資料展示室
休館日 月曜
※観覧料は同時開催の「北原照久コレクション展」の観覧料に含む
【芦屋市立美術博物館 公式HP】

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