サッカーの天皇杯 JFA 第102回全日本サッカー選手権大会は1日、2回戦が行われ、J1のチームが登場。ヴィッセル神戸はノエビアスタジアム神戸でJ3のカターレ富山と対戦し、前半に2点をリードされるも、残り20分で跳ね返し、3-2と逆転勝利をおさめた。
中2日でカップ戦に臨んだヴィッセル。先発は、GKが同日36歳の誕生日を迎えた飯倉大樹選手。DFは右から山川哲史選手、菊池流帆選手、小林友希選手、初瀬亮選手。ボランチに井上潮音選手と公式戦初先発となる18歳の尾崎優成選手、左ワイドに小田裕太郎選手、右ワイドに郷家友太選手、トップ下にボージャン・クルキッチ選手、そしてリンコン選手が前線に入った。また、大卒ルーキーGK坪井湧也選手が初めて試合登録メンバー入りし、控えGKに。酒井高徳選手、汰木康也選手、大迫勇也選手、佐々木大樹選手らがベンチからのスタートに。大黒柱のMFアンドレス・イニエスタ選手やFW武藤嘉紀選手、リーグ戦で出場を続けるMF大﨑玲央選手、GK前川黛也選手らはメンバーから外れた。
地の利をいかして前半からアグレッシブに試合を進めたかったヴィッセルだが、こちらもJ3リーグ戦から中2日で神戸に乗り込んできた富山に苦戦。前半はミスから自滅してしまう。開始早々の5分、DFのパスミスから富山にサイドからの展開を許すと、相手の右クロスに対応できず。ファーサイドへのボールを大外にいたMF安藤由翔選手にダイレクトであわせられ、先制点を献上した。そこから守備を固める富山を攻めあぐねると、27分、またもや自陣でボールを奪われたところからのショートカウンターで富山FW高橋駿太選手に決められ、その差は2点に。一方、前半にはFWリンコン選手に2度の決定機が訪れたが、富山GK山田元気選手の好守もあり、得点ならず。ヴィッセルは0-2での折り返しを強いられた。
ハーフタイムを挟んで、ヴィッセルは汰木選手を左ワイドに、けが明けの佐々木選手を右ワイドにそれぞれ起用。郷家選手がボランチに回ったなかで、反撃に出る。すると、後半開始早々に汰木選手がGKと1対1の場面を迎えるなど好機を作り出すも、最後のところで決めきれない。
何とか状況を打破しようと、ロティーナ監督は61分(後半16分)に酒井選手と大迫選手がピッチへ投入。すると、経験豊富な2人が入ることで、クリムゾンレッドが一気に活性化され、相手への圧力を強めていく。その反撃が実を結んだのは70分(後半25分)。酒井選手が右サイドからチャンスメイクし、ボージャン選手が粘って折り返すと、最後は大迫選手がゴール前で押し込んで、ようやくヴィッセルに1点が入る。「チームとして戦い続けて、1点目を決めることができたのが一番の転換点だった」(ロティーナ監督)。
その後も、クリムゾンレッドのサポーターの大きな手拍子を力に猛攻を仕掛けるヴィッセル。汰木選手、大迫選手らがゴールに迫っていくが、富山の粘り強い守備もあり、次の1点がなかなか入らない。刻々と時間が過ぎ、このままジャイアントキリングをくらうかと思われたが、終盤、ノエスタにはドラマは待っていた。
89分(後半44分)、初瀬亮選手の左コーナーキックにファーから飛び込んだ佐々木選手が起死回生の同点ヘディング弾。土壇場で試合を振り出しに戻し、スタジアム全体が息を吹き返した。押せ押せのなかで、アディショナルタイムに入った直後の91分、またも初瀬選手の左足がヴィッセルにゴールを呼び込む。左クロスからゴール前で待ち構えていたのは、大迫選手。背番号10はタイミングよく相手DFに競り勝つと、ヘディングシュート。これがゴールに吸い込まれ、劇的な決勝弾になった。その瞬間、ピッチ上のイレブンも、サポーターも、そして、記者席そばに陣取った武藤選手や槙野智章選手らベンチ外メンバーも喜びを爆発させた。
結局、このまま3-2で勝利したヴィッセル。「ヒヤッとはしたが、自分たちにとってとても大事な大会の次のラウンドに進めたこと、勝てたことは重要なこと」とロティーナ監督。ACL出場権を得られる大事なカップ戦の制覇に向けて、まずは一歩を踏み出した。6月22日(水)に予定されている3回戦では、J2のレノファ山口FCと対戦することになった。
試合後、殊勲の大迫選手はオンラインでの記者会見で、ゴールについて、「(出場後)押し込む時間帯が長かったので、攻撃に専念できたし、いいボールがきたので、決めれてよかったです」とコメント。酒井選手とともに流れを変える役割を担ったが、「結果どうこうより、まず僕ら経験ある選手がピッチの上で表現しようと考えた」と述べるように、迫力あるプレーを随所に体現し、チームを一気に勢いづけたのは、さすが経験ある実力者だ。