ポン・ジュノ監督が1年間でもっとも感動した映画 紛争が招いた壮絶な体験を伝えるドキュメンタリー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

ポン・ジュノ監督が1年間でもっとも感動した映画 紛争が招いた壮絶な体験を伝えるドキュメンタリー

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 主人公の安全を守るためにアニメーションで作られたドキュメンタリー映画です。今年度のアカデミー賞で、史上初となる国際長編映画賞・長編ドキュメンタリー賞・長編アニメーション賞の3部門同時ノミネートを達成。『FLEE フリー』が6月10日(金)、全国で公開されます。

 主人公は、アミン。アフガニスタンのカブールで生まれました。アミンが幼い頃、父親は突然、連れ去られて監獄に入れられ、戻ってきません。王制を倒して誕生したアフガニスタン政府は1979年、アミンの父親ら危険勢力とみなした3000人を連行しました。

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 その後、アフガニスタン軍とタリバンの内戦が激しくなり、アミンは母親・姉2人・兄とともに命がけで国を脱出します。着いたのはモスクワ。ロシアだけがアフガニスタン人に観光ビザを発行したそうです。

 息をひそめるようにして生活し、その後、密入国を手配するブローカーに大金を払ってスウェーデンへ渡ろうとしますが、失敗。ロシアに送り返され、逮捕されます。アミンはやがて家族と離れ離れになり、数年後にたったひとりでデンマークへ亡命します。ウクライナ空港からトルコを経由してコペンハーゲンへ。彼には、人に言えず20年以上もひとりで抱え続けていた秘密がありました。生きるためにアミンがしたことは……。

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 ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督がアミンと友人だったことから、彼の壮絶な体験を伝えようとこのドキュメンタリーが制作されました。

 アミンは仮名です。アミンや家族の安全を守るため身元を明かすことができず、インタビューをそのまま映像として撮影して公開するわけにはいきませんでした。そこで、ラジオドキュメンタリー作家でもあるヨナス監督がラジオの取材で使っていた方法で今作のインタビューをしています。アミンに、ベッドで仰向けに横たわって目を閉じるよう促し、かつて目にした光景や匂い、記憶や感触を思い出しやすくする手法です。

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 こうして収録したインタビュー音声を生かし、語りの内容に合わせた再現アニメーション重ねることで映画として成立させています。またアニメの中には、当時のニュース映像から抜粋した実写場面がはさまれていて、実話ドキュメンタリーの柱として支えています。さらにa-haの「Take On Me(テイク・オン・ミー)」などアミンが生きてきた時代を彩った楽曲が盛り込まれ、観客の共感を引き出します。

 戦争や迫害で故郷を追われている人は世界で8400万人を超えるそうです。アミンが歩いてきた道は紛争・難民・差別・セクシュアリティなど多くの問題を指摘しています。

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『パラサイト 半地下の家族』を撮ったポン・ジュノ監督は、今作について「人間は脆く繊細な動物であると痛感させられる。孤独を強いられた時、私たちの魂に何が起こるのかをこの映画は教えてくれる。今年見た映画の中で、最も感動した作品。涙が出た」と語っています。ドキュメンタリー映画『FLEE フリー』は6月10日(金)公開。(SJ)

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