◆猫の毛をヘッドフォンに活用することになったきっかけ
ヘッドフォンが「良い音」を鳴らすためには、電気の振動を伝える装置が重要ですが、その装置が音をうまく伝えるための「吸音材」や「遮音材」と呼ばれるものも肝要です。MECATの開発者が、その遮吸音材に猫の毛が適していることを発見したのは、猫の生態観察がきっかけだったそう。
猫は肉食で、ネズミを捕るハンターです。猫のネズミ狩りの手法は、じつはネズミの通り道での待ち伏せで、狩りは一撃必殺。わずか数秒で終わると言います。よくイメージされる、ネズミを追いかける猫は、狩りの下手な猫。一撃に失敗してしまい、必死になって追いかけていることになります。
待ち伏せですから、気配をネズミにさとられたのでは全く成功しません。そこで開発者は、猫は気配、つまり自分の体から発する音を消していて、そのことに「毛」が関係しているのではないかと考えました。
◆猫の体毛は優れた吸音材
開発者が実測してみると、猫の毛の吸音性能は、既にある数々の吸音材の性能を凌駕したそうです。体積は小さく吸音レベルは高いため、小さなヘッドフォンの吸音材として使うのにおおよそ最適と言えるものでした。ちなみに、犬の毛での実測では、猫の毛ほどの高い吸音性はなかったそうです。
MECATは、開発者が保護した猫「ミィ」から名前がつけられました。保護する前、野良猫のときにネズミ狩りをマスターしていたミィから、様々なヒントをもらったといいます。
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MECATをカスタム製品と聴き比べたミキサーエンジニアは、「猫の毛でカスタマイズされた方は(一般的なヘッドフォンよりも)音がすっきりクリアで、レンジ=幅(特にハイエンド)が拡大されたような印象。かなり大きな変化がある」と感じたとのこと。
音楽技術研究工房の小椋秀一さんは「猫の毛は長期にわたり変質しないという性質ももっています。猫とともに暮らす時はかけがえのない貴重な時です。その思い出を詰め込んだ特別なヘッドフォンを作ってみてはいかがでしょうか」と話しています。
猫への愛から生まれたMECATは製造元の音技工房のネットショップで完成品を販売、ホームページでカスタムオーダーを受け付けています。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』 2022年6月12日放送回より
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【放送音声】2022年6月12日放送回