主演は80歳の倍賞千恵子 超高齢化社会の日本に見出す“一筋の希望” 映画『PLAN 75』レビュー | ラジトピ ラジオ関西トピックス

主演は80歳の倍賞千恵子 超高齢化社会の日本に見出す“一筋の希望” 映画『PLAN 75』レビュー

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 超高齢化社会目前の日本の課題を、希望を込めて描く『PLAN 75』。今作を、映画をこよなく愛するラジオパーソナリティー・増井孝子さんが解説します。

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 75歳以上になれば、自分で最期の時を決めることが出来る権利を認め、支援する制度、それが“PLAN 75”。政府が推進するこの制度に申請すれば、10万円の支度金がもらえて、何に使ってもいい。火葬も埋葬も、合同でよければすべて無料で国が取り仕切ってくれる。国の支援の下、安らかな最期を迎えることが出来るというシステムだ。

 もちろん、架空の制度。しかしなんだか、近い将来、日本でも現実に運用されるようになるのではないか…と思えるほどの現実味もあって、ちょっと怖い。何といっても、日本では、2025年には国民のおよそ5人に1人が75歳以上になるという。超高齢化社会を迎える日本にとって、長生きする老人たちをどう支えていくのかは、本当に大きな問題だから。

 78歳になる角谷ミチ(倍賞千恵子)は、まだホテルの客室清掃係として働いている。夫はすでになく、子供もいない。この年になってまで働かなくては生きていけないことを悲しくつらいと思うか、携われる仕事があって、自立して人生にハリがあることを喜ぶか? 少なくともミチは、同年代の仲間たちと働き、時にはおいしいものを食べに行き、公民館でカラオケを楽しみ…と後者の部類だった。ある出来事が起こるまでは……。

(C)2022『PLAN 75』製作委員会Urban FactoryFusee

 ある日、ミチの同僚がホテルの部屋の清掃中に倒れた。それをきっかけに、ミチたちは解雇され職を失った。終のすみかだと思っていた団地も、建て替えのため立ち退かなくてはいけなくなった。高齢者は、家賃2年分を先払いしなくては部屋も借りられないことを不動産屋が告げる。あっという間に、社会での居場所さえもなくなっていく恐ろしい現実。

 一方、この“PLAN 75”の普及を推進する課の申請窓口で働く岡部ヒロム(磯村勇斗)のもとには、偶然、叔父の岡部幸夫(たかお鷹)が申請にやってくる。二人は、長い間疎遠で久しぶりの再会だった。

 成宮瑤子(河合優実)は、電話で申請者をサポートするコールセンターに勤務。ミチの担当になり、やがて仕事を越えた交流が生まれる。

 フィリピンから日本の介護施設に出稼ぎにきているのは、マリア(ステファニー・アリアン)。病気の娘に治療費を送るため、必死で働いている。そしてある時、もっといい給料がもらえるとして紹介されたのが、高齢者たちの最期に立ち会う仕事だった。

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