「春日大社には『神鹿信仰』があり、昔から鹿が大切にされてきました。そのため、鹿も人を怖がらなくなり、多くの人々が訪れる奈良公園でも生活するように。奈良に根付いた『鹿を大切にする』という文化が長年をかけて定着したおかげで、今の県外からの観光客にも愛される環境ができたのでしょう」(石川さん)
ここまで野生生物と人間が共存している地域は、日本だけではなく世界を見てもかなり珍しいことなのだとか。そのぶん、鹿があくまで「野生生物」であることを忘れてはいけません。
「出産を終えたばかりの母鹿は、子鹿を守るためにとてもナーバスになります。周囲に対して攻撃的になり、あまり接近しすぎると母鹿から攻撃されることもあります。また、発情期(9月~11月)になると雄鹿同士で戦うこともあり、なわばりに入ってきた場合は、人間であっても攻撃される危険性があります」(石川さん)
石川さんいわく、幼い頃から鹿に馴染みがある奈良県民にとって鹿とは「当たり前のように存在し、大切にすべき存在」なのだとか。奈良の歴史と共に歩んできた鹿がこれからもイキイキと暮らせるよう、適度な距離を保って見守っていきたいものです。
(取材・文=つちだ四郎)
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