【松谷弁護士】 パワハラ防止法は2020年に施行されたのですが、当初義務化の対象は大企業のみで、中小企業は努力義務でした。しかし、2022年4月に中小企業も義務化されることとなりました。義務化に伴い、企業では通報窓口を設置しなければならないのですが、実務的に対応できてない中小企業が多いのも事実です。
実際、近年の裁判所の新受件数で、民事訴訟の総数はあまり増えていないのですが、労働事件と交通事件については増えています。労働事件でいうと、残業代の請求などが多いだけでなく、パワハラ・セクハラの問題も多いため、中小企業にもパワハラ防止法が施行された今、弁護士がもっと中小企業の内部に入り、サポートして窓口を設置していかなければならないという課題もあります。
従業員のためはもちろんですが、窓口を作り、早期段階で第三者の専門家を介入させることが会社を守ることにもなります。トラブルをこじらせて会社の損害やコストが大きくなり、風評被害等も生じる前に解決できますし、労働環境を守るための対策をしていることは企業価値にもつながります。弁護士として、経済の基盤でもある中小企業を法的に支えていく必要があると感じています。
新型コロナウイルスは、日本経済全体に大きな影響を与えていますが、中でも中小企業への打撃は特に大きく、殊に、飲食やブライダル関連の会社は大きな痛手を負っています。アフターコロナで、資金繰りの相談や、再生、倒産、経営者保証の免除等といった新たな経済的再生、リスタートのための手続きのお手伝いをすることもあります。
※1 『中小企業白書 小規模企業白書 2021年版』中小企業庁編より
◆松谷卓也(まつたに たくや)弁護士 神戸明石町法律事務所(神戸市)
2004年に九州大学法学部を卒業。翌年の2005年に弁護士登録し、兵庫県弁護士会に入会。2013年には、神戸明石町法律事務所を開設。兵庫県弁護士会の業務委員として中小企業問題などに取り組む。