癒しや心地よい刺激とされる「ASMR」のサウンド。その音を収録するマイクに、今回は注目します。普段はラジオを陰で支えている技術スタッフが、ラジオ番組のなかで解説しました。
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近頃YouTubeでも「聴くと癒される」ということで、すっかりおなじみとなったASMR動画。癒し系の台詞をささやくものから、たこ焼きを焼く音やキュウリを食べる音、また電車の走行音や踏切の音などの動画も多くアップされています。中でも「バイノーラル録音」という方法で録音された動画音声は、ヘッドフォンで聴くと電車がすぐそばを通り抜けたり、車内にいるような感覚が味わえる、という事で一部の人には人気のようです。
ASMRは、「Autonomous Sensory Meridian Response」の略で、直訳すると自律感覚絶頂反応(じりつかんかくぜっちょうはんのう)といいます。聴くと脳がゾワゾワするような感覚になる現象で、その録音でよく使われているのが「バイノーラル録音」です。
バイノーラル録音は、専用のマイクを使います。有名なのは、人の頭の形をしたNeumann社製のダミーヘッドマイク「KU100」。人間の耳の奥にある鼓膜への音の届き方を再現し、より臨場感のある立体的な音が収録できるマイクです。この「KU100」はネットで調べると100万円以上の値段で販売されていますが、最近ではもっとお手頃価格なバイノーラル録音マイクも出てきています。
今年新たに発売されたのが、アシダ音響のバイノーラルマイクロフォン「BNM-001」(価格は7,700円)。耳にかけるタイプのイヤホンのような形ですが、実はマイクになっていて、人間の耳の位置で録音できるので、リアルで立体的な音を収めることできます。公式ショップによると、電車の音、波音や小鳥のさえずり、自然環境音はもちろんのこと、結婚式、運動会、旅行、講演会、普段の何気ない会話など、その場の空気感まで思い出として残せます。また、ささやき声や炭酸音、咀嚼音などといったASMR録音にも向いているとのこと。
ほかにも、ZOOM社製のマイク「H3-VR」は、360度で収録した音を、後からステレオやバイノーラルに変換して使うことができます。また、スマホと接続して簡単にバイノーラル録音が行えるゼンハイザー社製の「AMBEO SMART HEADSE」は、イヤホンとしても使えて、動画を撮るときにはバイノーラル録音が可能です。
バイノーラル録音というと難しいイメージがありますが、一般向けの機材もたくさん出てきて、少しずつ身近になっているようです。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』 2022年7月3日放送回より
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【放送音声】2022年7月3日放送回