【中将】 拓郎さんは当時の歌謡、ポップス界の歌手にもさまざまな楽曲を提供しています。森進一さんの「襟裳岬」(1974)、梓みちよさんの「メランコリー」(1976)、石野真子さんの「狼なんか怖くない」(1978)……いずれも大ヒットを記録しました。
特にキャンディーズとの仕事には熱心だったようで、「やさしい悪魔」(1977)のレコーディングではギター持参でキャンディーズと一緒にスタジオに入り、付きっ切りで歌唱指導したというエピソードが残っています。
【橋本】 キャンディーズって「春一番」(1976)みたいにあっけらかんとした明るい曲が多いのかなと思っていましたが、「やさしい悪魔」はちょっと雰囲気が違いますね。
【中将】 これまでより大人っぽい曲を作ってくれというオファーだったそうですが、メロディーの随所に拓郎節を感じますよね(笑)。
拓郎さんは楽曲提供にとどまらず、菜津美ちゃんが好きな原田真二さんを発掘してプロデュースを手掛けるなど、プロデューサーとしても音楽シーンに大きな影響を与えています。つくづく多才な方だと思いますが、こういうセンスが、1996年から拓郎さんがKinKi Kidsと司会を務めた『LOVE LOVE あいしてる』(フジテレビ)につながっているんでしょうね。僕もリアルタイムでこの番組のファンでしたが、拓郎さんがまだ若いKinKi Kidsにギターや作曲を教えたり、当時シノラーブーム全盛の篠原ともえさんと絡んだり、なにかと刺激的で魅力のある音楽番組でした。最後にご紹介するのはそんな『LOVE LOVE あいしてる』の主題歌だった「全部だきしめて」(1997)の拓郎さんバージョンです。
【橋本】 KinKi Kidsのバージョンしか聴いたことがなかったのでアイドルソングのイメージだったんですが、これを聴くとめちゃフォークですね! でも『LOVE LOVE あいしてる』をもって芸能活動を区切るというのは、よほど番組や共演者のみなさんに思い入れがあるってことですよね。そういう人たちに囲まれた舞台でラストを飾れるって本当に素敵なことだと思います。
【中将】 拓郎さんが6月29日に発売したラストアルバム「ah-面白かった」にもKinKi Kidsのお二人や篠原ともえさんが参加しています。ぜひ多くの方に番組やこのアルバムに接していただきたいと思います。
(※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2022年7月17日放送回より)