『中村佑介20周年展』@大阪・あべのハルカス(2)「これが僕の成人式」低い自己肯定感が築いた信念と感謝 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

『中村佑介20周年展』@大阪・あべのハルカス(2)「これが僕の成人式」低い自己肯定感が築いた信念と感謝

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「イラストレーターの社会的地位を上げる」

「漫画家だったら手塚治虫さん、野球だったら長嶋(茂雄)さん、プロレスならアントニオ猪木さん…イラストレーターでそういう(世間に確固たる存在として広く認められる)人が出てくると、きっと“イラストレーター”に対する社会のイメージがアップするんですよね。それが僕じゃなくてもいいんです」(中村氏)

 そう考えるきっかけは、これまでのサイン会や講演会で出会った人たちにあった。現役ながら後進のバックアップにも相当な力を注ぐ中村氏。いわく、イラストの道に進みたい希望を持ちつつも、イラストレーターという職業への世間の理解が深まっていないことから、周りに反対されて断念。それでも夢を抱いて努力し続ける人が大勢いるのだと。

 そんな彼・彼女らの努力を実りにつなげる礎として、イラストレーターの社会的地位向上が必要と考えているのだ。

「あと一歩自信がないだけでプロにならない方がたくさんいる印象を持ったので、そこを何とかできないのかなと。(イラストレーターの世界は)新しい才能が出てきたら新しい仕事が増える。(アドバイスは)楽しんでやってる感じ!」(中村氏)

イラストに関する質問やお便りに接して笑顔の中村佑介氏 (ラジオ関西『中村佑介の一期一絵』収録スタジオにて、2020年撮影)

 今や、後進へのアドバイスは中村氏のライフワーク。今年4月には、イラストレーター応援プラットフォーム「GENSEKI」の顧問にも就任し、Twitter上で積極的にクリエイターと交流。今展でも「リアル合評会」を開く。

◆20周年 そして湧き上がる「感謝」
 トップランナー、飛ぶ鳥落す勢い…そう表して過言ではない活躍ぶり。引く手あまたで影響力も大きい。しかし、本人はいたって冷静だ。それは言い換えれば、信念と誇りに裏打ちされた真の謙虚さだろう。

 その中で最近、数年前に描いた作品に「事実と違っていた」箇所を見つけたのを一つのきっかけとして、強く自覚したことがあるという。この20年で関わってきた人たちの存在だ。

 中村氏は、件の作品について「出来上がった時は『どんなもんだい!』くらいにさえ思ってたのが……(間違いがあったと)気付いて恥ずかしい」と打ち明けた上で、こう語った。

「きっとこれまでの20年間、違っているとわかりながら、(決定権のある人との)間に入って(とりなして)くれたり、指摘するとややこしい奴だから(笑)と、抑えてくれたりした人が何人もいたはず。この展覧会で若い頃の作品を観るにつけても、こんな稚拙な技術なのによく受け入れてくれたなぁと思う。『それでも』と認めてくれた人たちがいたということ」(中村氏)

 今展のあいさつ文。中村氏は、幼い頃からの自身の内面と絵との対峙の関係について触れながら、こう記している。

「ほとんどの絵の人物が一人でいるのは、僕のそんな人生を自分で肯定したかったからなのだと思います(中略)ずっと目を逸らしていた横顔の少女がふと額縁の外に目をやると、そこにはずっと応援して下さった方たちがいたことに気付きます。(中略)20周年展。これが僕の成人式なのですね。ご参列の皆さま、ほんとうにありがとうございます」

 プロになって認められても、なかなか上がらなかった自己肯定感。「長く続けるのは難しい」という自覚。だからこそ、恵まれた運や周りへの感謝が膨らんだ20周年。

「20年描かせてもらってるのは幸福なこと。未熟ですよ。まだまだここから!」

 唯一無二のイラストレーターは、もう次への扉を開けている。

◆「中村佑介20周年展」20th Anniversary Yusuke Nakamura Exhibition
公式ホームページはコチラ
会  期 2022 年 7 月 23日(土)~ 9 月 25 日(日)
開館時間 11:00~19:00 ※入場は18:30まで
休  館 月曜 ※8月15日(月)、9月19日(月・祝)は開館
会  場 大阪芸術大学スカイキャンパス 《あべのハルカス24階》
     〒545-0052 大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1丁目1-43
     ※大阪芸大の本キャンパスではありません。
     ※あべのハルカス24階へは、17階でエレベーター乗り換え。

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