音の聞こえ方に関わる「位相」について、普段はラジオを陰で支えている技術スタッフが、「波長」「周波数」の話もまじえてラジオ番組のなかで解説しました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
私たちが“音を聞く”というのは、音の波「音波」が伝わることを表します。音波にはいろいろな長さや幅があり、また、音波の動きも聞こえ方に関係しています。
音波は、波形にすると山と谷の連続になっていて、この波の1回の始まりから終わりまでの1周期の長さを「波長」と言います。一方、1秒間の波の変化の数を「周波数」といい、音の波の振動数が多いほど周波数は“高い”と表現されます。すなわち、波長が短ければ短いほど、そのぶん1秒間の変化の数が多くなるため、周波数は“高く”なります。逆に、波長が長くなると周波数は低くなります。言い換えれば、高い音(周波数が高い)は波長が短く、低い音(周波数が低い)は波長が長いということです。
また、山と谷の上下の幅、振幅を見てみると、振幅の大きさは、音波のエネルギーに関係しています。振幅が小さいと音波のエネルギーも小さく、幅が大きいと音波のエネルギーも大きくなります。たとえば、太鼓をたたいた時。大きいサイズの太鼓の革が波打つように揺れたときには大きい音が出ます。音波の振幅が大きい=音が大きいということです。
同じ周波数の音で比べると、音波の振幅が大きい方が音も大きく聞こえます。ただ、違う周波数の音で比べると、周波数によって大きく聞こえやすい音や、小さく聞こえやすい音もあります。
この、山や谷になった波の形に関係があり、ライブやイベントの音響や音源編集を行うときに注意しなければならないのが「位相(Phase:フェイズ)」です。
位相は、時間とともに周期的に変化する波動の現象においてどのタイミングにいるかを示す量、という意味ですが、音に関する「位相」では、 波の1周期の山と谷の位置を表します。 音楽編集ソフトでフェイザーというエフェクトがありますが、これは音の位相を少しだけずらして元の音に重ねると、揺らいだ音になるエフェクトです。
山と谷が逆になった「逆位相」の周期の波を元の音に重ねると、音が打ち消し合って音が聞こえなくなるという現象が起こります。これは、ヘッドフォンなどのノイズ キャンセラーで応用されていますが、PA現場で2つのスピーカーから出した音の位相がぶつかり合ってしまったときには、音が聞こえにくくなるようなトラブルにつながります。また、2つのマイクで収録した音源を編集で重ねたときにも、稀にこの音の 打ち消しが起こる場合がありますので、注意が必要です。
放送現場では収録番組が放送される前に、音声がこの「逆位相」の状態になっていないかのチェックが行われています。ミキサーやDAWには位相を反転させる機能がついているので、音響や音編集を行う人は逆位相について知っておくと安心です。
※ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』 2022年8月14日放送回より
ラジオ関西技術センターがお送りするこの番組で、あなたの質問が読まれるかも……!
興味がおありの方は、番組にハガキでおたよりください。お待ちしています。
宛先⇒ 〒650-8580 ラジオ関西『おしえて!サウンドエンジニア』係
【放送音声】2022年8月14日放送回