林歳彦氏(会社経営者・環境活動家)と、フリーアナウンサーの田中大貴(元フジテレビアナウンサー)がパーソナリティーを務めるラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』。2022年8月22日放送回では、元プロ野球選手で、現在はさわかみ関西独立リーグの兵庫ブレイバーズで現役を続ける久保康友投手(42)がゲスト出演。久保投手の異彩を放つ投球術や、現役を続ける思い、プロの在り方などについて、番組パーソナリティー陣や2週連続ゲスト出演となったお笑い芸人・かみじょうたけしとともに、トークが展開された。
久保投手は関西大学第一高校のエースとして1998年の第70回選抜高校野球大会(春のセンバツ)で準優勝を果たすなど、高校時代から注目を浴び続けている、「松坂世代」の代表格の1人。社会人の松下電器(現、パナソニック)を経て、2004年のドラフト自由枠で千葉ロッテに進み、プロ入り。その後、阪神やDeNAでもプレーするなど、13シーズンにわたるNPBでの通算成績は97勝86敗6セーブ、防御率は3.70。2018年からはアメリカ独立リーグやメキシコリーグを渡り歩き、コロナ禍の影響もあって約2年半は無所属だったものの、今年から兵庫の地を舞台にその独特な投球術を武器に、今も現役で投げ続けている。また、8月には北海道ベースボールリーグの富良野ブルーリッジに約2週間のレンタル移籍を行ったことでも話題を呼んだ。
番組の前半では、久保投手の高校球児時代にスターだったことについて、かみじょうが自らのエピソードを交えながら語り、場を和ませる。また、久保投手も高校時代のことをよく覚えているようで、夏の甲子園、第80回大会2回戦の尽誠学園高校戦をかみじょうとともに振り返るなど、当時をなつかしんでいた。
一方、フジテレビでスポーツ番組を担当しているときに取材していた田中アナは、久保投手について、「視点が面白くて、インタビューがしやすい選手だった」とコメント。スライダーの投げ方を話すときに独特な表現をしていたことや、対戦チームの選手が「何を考えてこの打ち方にしたのか」を言語化していたことが印象に残っていると振り返る。
田中アナの話を受けて「そういう(対戦相手の観察をする)ところで生き残ってきた部分はある」という久保投手は、自身の投球術を次のように説明する。
「他の選手とすみ分けをしていたんです。相手の得意なジャンルで真っ向勝負をしても勝てないので。もともと人間観察が趣味だったので、相手のどういう能力が並以下なのかを分析して、相手の苦手なジャンルに持ち込んで勝負していました。何度も同じ相手と対戦していると、プレースタイルだけじゃなく性格も分かってくるんですよね。例えば、短時間で集中して高いパフォーマンスを発揮する選手の場合は、じらして長期戦に持ち込んでみるとか……。そういう観察を続けることで対応策を練っていました」
番組の後半では、高校野球とプロ野球のメンタルの違いに関することが話題に。田中アナが「斎藤佑樹さん(元日本ハム)いわく『プロ野球選手になると、ここまで力を出すとけがをするというのが分かるから、逆算してプレーするが、高校球児は心身ともに未熟だからリミッターの概念がなくて大変なプレーができる』と話していた。久保さんはそのような経験はありましたか?」と質問を投げかける。
この問いに対して、「自分も基本的に『そこで終わっても良い』くらいの気持ちで投げていた」と高校時代を振り返った久保投手。ただし、プロになると状況は変わるという。
「プロはその(目の前の)1試合だけではなく、その後も毎回対戦が続くもの。最初の試合はやっぱりアドレナリンが出てパフォーマンスも高くなるんですが、それ(試合)が毎週になってくると“日常”になってしまう。どんなに刺激的なことでも、それが毎度続けば刺激にならなくなる。そうなったときに自分をどう盛り上げていくか、あるいは盛り上げないまま対戦相手とどう向き合うかを考える必要が出てくると思います」
さらに、久保投手は、プロ野球ではいかに変化したり工夫したりすることが、生き残りのために重要だと語る。
「普通に試合をこなしているとルーティンワークになってくるので、自分の中でどう変化を起こすかが大事。途中でみんな(ルーティンワークだと)気付くもの。それでも数字を残せる選手なら良いですが、それができない場合は何かしら工夫しなきゃいけない。プロ野球の面白いところは、その辺が自由なこと。だから気付いて何かしら行動できる選手は残っていくし、気付いても行動しない選手や気付けない選手は自然と離れていく(やめていく)んじゃないでしょうか」