進む高齢化社会。厚生労働省によると、団塊の世代(1947~1949年生まれ)がすべて75歳となる2025年には、日本の全人口の約2割が75歳以上になると言われています。一方、出生率は国際的に見ても低い水準にあり、少子化も深刻。兵庫県でも対策が急がれている子育てや高齢化の課題について、神戸大学がある取り組みを行っています。
平成16年に創設した「神戸大学大学院保健学研究科地域連携センター」で行っているのは、人々の健康や生活を守るための地域支援活動です。保健学研究科の看護師・理学療法士・作業療法士・臨床検査技師等の養成課程が連携し、障がい者や高齢者の支援事業など全8事業を展開しています。その取り組みについて、センター長の和泉比佐子教授に聞きました。
和泉教授によると、同センターは「今ある健康を維持して、より健康に暮らすことや生活の質を向上させることを目指している」とのこと。例えば、就学前の発達が気になる子どもと家族のための支援事業では、保護者が発達障がいについて専門員から学ぶ講習プログラムや、保育士・学生ボランティアなどによる託児を行います。看護師や作業療法士などを目指す学生にとっては、地域との交流が研究分野の学びを深めることにも繋がります。
その人らしさと尊厳ある社会に焦点を当てた地域高齢者・認知症と家族への支援では、認知症予防・治療・介護を中心とした支援活動を実施しています。コロナ禍で対面での活動が制限されることから、講習会や研修会にはzoomを活用し、学生もボランティアとして運営に携わります。
また、若者をターゲットにした取り組みも。20代後半から急増し、年間約3,000人が命を落としていると言われている「子宮頸がん」。原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)や検診の重要性などについての活動も行っています。学生が主体となり、啓発動画も制作しました。
他にも、在宅療養に関する困りごとや慢性疾患を持つ家族の悩みなどを気軽に相談することができる「家族お悩み相談室」もあります。完全予約制(無料)で、オンラインでの相談も可能。
和泉教授は、「大学と地域が連携して行っている取り組みはたくさんあります。まずはその取り組みについて興味を持ち、自身の健康について考え、より良い生活を送ってほしい」と話します。こういった取り組みを知ることが、自分や家族を大切にすることに繋がりそうです。
(取材・文=岡本莉奈)