老朽化のため建て替え工事を進めていた兵庫県警・尼崎南警察署の新庁舎(兵庫県尼崎市昭和通)の落成式が30日、開かれた(完成は6月30日、業務開始は7月19日)。
尼崎南警察署は兵庫県尼崎市の南東を管轄区域とし、大阪府と隣接する大規模署。戦後の警察制度改革などで、数回の署名変更を経て、1954(昭和29)年、尼崎中央警察署となった。その後尼崎市内は4署(中央・東・西・北)体制だったが、2006(平成18)年の尼崎中央警察署と尼崎西警察署が統合して「尼崎南警察署」となり、旧中央署を本庁舎とし、旧西署は西分庁舎として利用していた。
しかし本庁舎は築50年近く経ち老朽化が進み、署員の増加で手狭となったため、2019年10月から建て替え工事を行っていた(工事中、西分庁舎を仮庁舎として使用 今後解体される)。
新庁舎は鉄筋コンクリート造7階建(延床面積8050.22平方メートル)で、旧庁舎の5階建(同4052.72平方メートル)と比べて倍増した。総工費は約47億円(旧庁舎、西分庁舎解体費用なども含む)。兵庫県内では姫路警察署(姫路市)に次ぐ大きさ。
沿岸部を管轄することから、かつては尼崎閘門(こうもん 通称・尼ロック)近くに詰所を置き、船舶も保有していた尼崎南警察署。今後30年以内に高い発生確率が予測される南海トラフ巨大地震を想定して、津波や高潮による浸水対策として1階部分はすべて駐車場に、業務は2階以上(地上から約5メートル以上)で行う。
そして、緊急時の自家用発電機を屋上の7階に設置した。自家発電は連続約40時間(給油時は約120時間)稼働可能で、災害時の拠点としての活用もできる。
環境への配慮から太陽光発電(20キロワット)やLED照明、雨水を利用した給水設備もあり、点字案内やバリアフリートイレ、車いす用カウンター、障がい者用エレベーターなどユニバーサルデザインを整備して利便性を高めた。
■治安守るため、先駆的な対策を推進
尼崎市で戦後70年近く営業を続けていた違法風俗街「かんなみ新地」で、組合加盟店に対し、尼崎市長と尼崎南署長が連名で風俗営業法に基づく警告を出した。営業を続ければ摘発も辞さない、というスタンスが功を奏し、約30店舗が一斉に閉業、組合を解散に追い込んだ。
尼崎市内には複数の暴力団関連施設が存在したが、2021年、発砲事件のあった六代目山口組系幹部の住宅を市が買収し、全国初の事例となった。このほか組事務所2か所について、解散または神戸地裁による使用禁止の仮処分が決定し、それぞれ解体された。市内では2019年以降、特定抗争指定暴力団「六代目山口組」と、対立する「神戸山口組」との抗争とされる事件が相次いだことも背景にあり、警察と行政がタッグを組み、治安対策を積極的に進めている。