「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」などを手掛けるアニメ制作大手、シンエイ動画(東京都西東京市)が神戸市中央区の旧居留地に新スタジオを開設、このほど開所式を行った。
本社のある東京以外に同社が拠点を持つのは初めて。新しく募集、採用したアニメーター9人にこれから研修を実施、2023年4月から本格的に仕事をスタートしてもらう。本社スタジオでは作画を手書きとデジタルで併用しているが、神戸ではすべてデジタル制作になるという。
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開所式で、梅澤道彦社長は、アニメ制作の需要が激増しているのに作り手が足りない問題、東京圏にアニメ会社の約9割が集中している現状を挙げ、「神戸にもアニメ学校はあるのに、せっかく磨いた技術を生かす場がない」と指摘。
一方で、人手不足のため、作画を中国や韓国、東南アジアに発注している業界全体の状況も説明、「メード・イン・ジャパンのアニメを作りたいとの強い思いがある。地方でアニメを学ぶ若者の協力を得たい」と強調した。デジタルで作画する神戸スタジオを成功させ、得たノウハウによって、他の地域でも新スタジオを作りたい方針だ。

制作担当役員の山田俊秀常務取締役は、「ものになるアニメーターは一握り。気を引き締めて頑張ってほしい」と激励。30年以上前、神戸市水道局から依頼されたアニメ制作のために神戸を歩いた際、「非常にいい街」との印象を持ったというエピソードを披露し、「2年前、地方にスタジオを作る話が出た時、『やっぱり神戸がいい』と思った」と話した。大阪商圏で、四国などとも行き来しやすい点も魅力的だったという。

神戸市の藤原政幸医療・新産業本部長は、「神戸の地を選んでもらってありがたい。スタジオがある旧居留地はおしゃれな街並み。気分転換を図って、いい作品を作ってほしい。神戸発でアニメが放映される日を楽しみにしている」と期待を寄せた。
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