今年2022年の中秋の名月は9月10日。満月となる。
中秋の名月をめでる習慣は、平安時代に中国から伝わったと言われている。日本では農業の行事と結びつき「芋名月」、海外では「コーンムーン」や「ハーベストムーン」と呼ばれることもある。
2021年から23年は、「満月の中秋の名月」となるが、中秋の名月が満月になるとは限らない。例えば2024年中秋の名月は9月17日、満月は18日となるなど、ずれることもある。今年はまん丸の中秋の名月を見られそうだ。
月というと、再び人類が月に降り立つことを目指したアルテミス計画が本格化している。「人類が初めて月に降り立ったアポロ計画は50年前のこと。長いブランクができ、またアルテミス計画の第1弾となるロケットの試験打ち上げは少し延期となっていますが、そうしたニュースも含めて、人類の月着陸へ関心をもって月見を楽しんでほしいなと思います」と、明石市立天文科学館の井上毅館長は話す。
9月は月と惑星の競演も。
中秋の名月の前後は、土星と木星が相次いで月に接近する。10日夜9時ごろ、南南東の空には土星が、東南東の空には木星がある。月は8日には土星の近くにあり、11日には木星の近くに。明るい月の近くで輝く惑星の位置の変化を観察するのもいい。
中旬になると火星が月に近づく。このころの火星の明るさは0等級で、真夜中の東の空で赤く輝いている。そして火星の少し右側にはオレンジ色の星・おうし座の1等星アルデバランが見える。
星の色が違って見えるのは、星の表面温度が違うためで、高温の星は青白く、低温の星は赤っぽく見える。アルデバランの表面温度は3800度なのでオレンジ色に見える。一方、火星の表面温度は、夏は平均-60度、冬は-120度。赤く見えるのは表面が赤い土で覆われているため。国立科学博物館のホームページによると、アメリカが1970年代に行ったバイキング計画で、探査機が火星の着陸に成功し、砂を分析した結果、鉄の酸化物=鉄サビであることがわかった。このことから赤く見える。
またアルデバランの周辺は「ヒアデス星団」というおうし座の顔をつくる星団で、肉眼でも星がまばらに群れている様子が見える。少し暗いがV字型に並んだ星を見つけられたら、それがヒアデス星団。
一方、9月は木星が観察シーズンを迎える。
木星は27日に衝(しょう)を迎える。「衝」とは、地球から見て太陽とちょうど反対側になる瞬間のことで、このころの惑星は地球との距離が近く見かけの直径が大きくなり、光っている部分を正面から見るため影になる面積が少なくなり明るく見える。そして日の入りの頃に東の空から昇り、真夜中に南中、日の出の頃に西の空に沈むため、ほぼ一晩中見ることができる。
木星の縞模様は望遠鏡を使うと見ることができる。また望遠鏡を使えば、木星の4つの衛星「ガリレオ衛星」も見つけられる。
星たちの色や明るさの違いを感じたり、人類が月に再び降り立つ日を想像して、秋の夜空を眺めるのもいいかもしれない。
(参考:国立天文台ホームページ 記事協力:明石市立天文科学館・井上毅館長)