相次ぐ特殊詐欺事件の捜査態勢を強化するため、兵庫県警に14日、50人体制の「特殊詐欺特別捜査隊」が発足した。こうした専従捜査セクションを立ち上げたのは、大阪府警(特殊詐欺捜査課)と愛知県警(組織犯罪特別捜査課)に次ぎ全国で3例目。2022年秋の人事異動・機構改革のメインとなる。
特殊詐欺の近年の手口としては、ATMでの振り込みや電子マネーの購入を要求する「非接触型」が主流。かつてのような「自宅訪問型=接触型」と異なる。
さらにパソコン画面にウイルス感染の警告を表示し、偽のサポート窓口に電話をさせて料金を要求する「サポート詐欺」が登場するなど巧妙化している。
兵庫県警も、これに追従する形で「特殊詐欺特別捜査隊」を暴力団対策課などが属する刑事部・組織犯罪対策局に設けた。これまで捜査二課で特殊詐欺捜査に従事していた捜査員も加わる。
2019年以降、特定抗争指定暴力団「六代目山口組」と「神戸山口組」との対立抗争状態が続いているが、両組織の拠点が置かれている兵庫では、警戒と取締りを強化する過程で「収入源の根絶」が不可欠と判断、反社会的組織の解体に向けた総合対策の一環と位置付けている。
兵庫県内の昨年(2021年)の特殊詐欺の認知(兵庫県警が確認した)件数は859件、被害総額は約12億円。人口密度が高い神戸市内・阪神間といった都市部が被害の約8割を占める。2022年は1~6月の上半期の被害額が約5億2千万円(前年同期比・マイナス5千万円)と高止まりの状態が続いている。全国の2021年の認知件数は1万4498件(未遂含む)、被害総額は約282億円にのぼる。
「オレオレ詐欺(後の”なりすまし詐欺”)」「還付金詐欺」など『振り込め詐欺・4類型』と呼んでいた2000年代後半、兵庫は全国有数の多さで件数、被害額の増加に歯止めがかからなかった。この頃は「犯行グループの検挙よりも抑止対策」との方針を立てていた。
しかしその後、捜査員が東京都内のアジトに乗り込み、グループの末端を構成する複数の人物を逮捕するなど検挙重視へシフトするが、指示役や首謀者までたどり着けない状態が続いていた。