1990年代後半から2000年代に入ると、腕時計の製造技術が向上し、密閉性が高いケース(容器)やパッキン(ゴム製のリング)が進化して、腕時計の防水性はより高まっていきます。さらに、ケース造りの技術が進歩したことで、より薄い時計ケースを製造できるようになりました。「ロイヤルオーク」が発売された当時、ブレスレットのコマを成形するのは手作業でしたが、今は機械の進歩があり、ある程度は機械によって仕上げができるようになっています。
さらには、かつては高級なモデルに採用されていた、「フリースプラング・テンプ」という、衝撃に強い調速機構が低価格化し、近年は10万円代のモデルにも採用されるようになりました。強い振動があっても、精度(時間の正確性)がある程度保てるようになったのです。
これらの要因から、スポーティかつドレッシー、つまり、頑丈で、薄い腕時計が低価格で製造できるようになり、「ラグスポ」人気が加速します。例えば、大ヒットしたモーリス・ラクロア「アイコン」は、高級機の雰囲気を持ちながら、わずか20万円代。「ラグスポ」は腕時計業界の新たな「成長分野」となっていきます。
◆ライフスタイルの変化が、ラグスポをメインストリームに押し上げた!
1972年に発表された「ラグスポ」が、2010年代から流行った理由として、世の中の工業製品に「スポーツ」の要素が求められるようになった事は忘れてはいけません。例えば、自動車業界ではSUV車が近年人気となっています。ラグジュアリーの中にスポーツの要素が取り入れられるようになり、腕時計もその例に漏れなかったのです。人々のライフスタイルの変化によって、「ラグスポ」がこれだけ隆盛を極めているといえます。


また、近年の地球温暖化が影響しているとも考えられるでしょう。高温多湿な現代の気候にラグスポは極めてマッチしています。以上のことから、しばらくは、万能な「ラグスポ」人気は続きそうです。腕時計を購入する際、候補の一つに入れてみてはいかがでしょうか?
(ラジオ関西Podcast『やさしい腕時計』 #15『最近流行りの「ラグスポ」って、どんな時計? 手は届くの?』より)






