兵庫県尼崎市で、特定抗争指定暴力団「六代目山口組」の傘下組織が、21日までに事務所を閉鎖し、市内の暴力団事務所がゼロになったことがわかった。この組織は自主的に閉鎖したとみられる。
暴力団排除に携わる弁護士によると、複数あった暴力団事務所の排除を完了した自治体では全国初という。
兵庫県警によると、尼崎市内では2015(平成27)年時点で、暴力団事務所が8か所確認されていた。
尼崎市は2019年(令和元)4月、「尼崎市暴力団排除活動支援基金」を創設し、暴力団追放運動を支援してきた。
折しもこの年以降、市内では分裂した山口組の対立抗争事件が相次ぎ、暴力団対策法に基づく特定抗争の警戒区域に指定されている。
また公益財団法人・暴力団追放兵庫県民センターも、暴力団対策法の代理訴訟制度に基づき、近隣住民から委託を受け市内3か所の暴力団事務所の使用を禁じる仮処分を申請、神戸地裁がそれぞれ仮処分を決定した。各事務所は民間に売却され解体された。このほか2021年6月には組幹部宅を買収、全国の自治体で初めてとなった。
今回閉鎖された暴力団事務所をめぐっては、2022年1月以降、同様に仮処分申請に向けた準備が進められていた。長く暴力団排除運動に取り組む弁護士は「抗争事件が起きるたびに住民の不安は増大し、市のイメージも傷つけられてきたが、今回の全面排除は市民・行政・警察が一体となったモデルケースとなった。この機運を全国に広げたい」としている。
また捜査関係者は「外形的には排除されたが、水面下で新たな拠点を設けて活動する可能性もある。引き続き警戒を強めたい」と話す。