スイス時計産業を襲った危機 きっかけは日本の「クォーツ」誕生 「スウォッチ」と「組織再編」で復興 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

スイス時計産業を襲った危機 きっかけは日本の「クォーツ」誕生 「スウォッチ」と「組織再編」で復興

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 当時の時計業界の中心はスイスとアメリカでした。そのため「クォーツ時計の躍進」によって、それら地域の時計産業の売上は大きく落ち込む結果となります。スイスにおける、1980年代前半の輸出高は、1974年と比べると半分以下にまで落ち込み、多くの時計関連企業が廃業や倒産に追い込まれました。

 従業員数は、スイスでは1984年に1970年代の3分の1まで落ち込んだとさえ言われます。当時のスイスやアメリカの時計産業目線ではこのクォーツ時計の普及は文字通り「ショッキング」な出来事でした。

 しかし、「誰もが正確な時間を知ることができるようになった」と考えれば、低価格なクォーツ時計の普及は「ショック」ではなく「レボリューション」な出来事です。世の中の人々が皆「正確な時を刻む腕時計」を買える世の中へ変貌させたクォーツ時計は、いま振り返ると人類の生活の改善へ大きく貢献したと言えるでしょう。

◆時計業界の再編、高級化と大衆化の二極化が進む!

「クォーツレボリューション」を経て、まず大きく動き出したのがスイスの時計業界です。現在の「スウォッチグループ」が先導し、その中心にいたのは、ニコラス・G・ハイエック氏(1928-2012)でした。

「スイス時計産業の救世主」と言われた彼は、元々時計業界とは無縁のコンサルタント会社の経営者でした。しかし、スイス時計業界から請われ、その再編に着手します。まず、彼はクォーツのムーブメントの薄さを活かしたプラスティック製のクォーツ時計「スウォッチ」を作りました。

スウォッチの時計ivantaborov/(C)123RF.COM

 その後、彼は▼生産設備への巨大な投資▼厳格な品質管理▼セールスの見直し(直営化)――を業界へ導入させます。ハイエックはこのスウォッチの成功体験を「オメガ」にそのまま転用、「ロンジン」や「ティソ」などの老舗時計ブランドと共に「スウォッチグループ」を設立します。

 業界のグループ化(コングロマリット化)の流れは他のブランドにも波及します。2000年前後より腕時計メーカーはラグジュアリーブランドのグループ傘下へ入る動きが活発化し、2022年現在では「スウォッチ」のほかに「リシュモン」と「LVMH」が腕時計の3大グループ(コングロマリット)を構成しています。

 しかし、そんな業界の動きの中でも、「独立を保つ腕時計ブランド」があることも見逃せません。ロレックスやパテックフィリップ、セイコーもそのひとつです。

 このように、腕時計産業は「クォーツレボリューション」を経たことで、大きく変化し成長しました。機械式時計は息を吹き返し、高級化へシフトする一方、工作機械の進歩で「質の高い低価格な機械式腕時計」も増加中です。

 クォーツ時計も40万円以上の製品が出るなど、両者(機械式・クォーツ式)共に価格帯は二極化する傾向にあり、なおかつ両者の「棲み分け」も実現しました。

 クォーツ時計の出現から約半世紀以上経過して、クォーツ時計が「機械式時計の良さ」を再認識させてくれた事も見逃せません。これからは機械式とクォーツ時計を上手に使い分けて、腕時計を楽しんでくださいね。

(ラジオ関西Podcast『やさしい腕時計』 #16『「スウォッチ」誕生の裏にセイコーの存在 クォーツが機械式と肩を並べるまで』より)


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