腕時計の故障の原因の一つに「磁気帯び」という症状があります。機械式時計のムーブメントが「磁化」することで時計の精度が落ちたり、最悪の場合だと動かなくなる可能性すらある、まさに「腕時計の大敵」。磁気帯びから大切な腕時計を守るためにはどうすればよいのでしょうか。その原因や対策方法などを、登録者数が6万4千人を超える「腕時計YouTuber」であるRYさんが、『やさしい腕時計』(ラジオ関西Podcast)で解説しました。
◆磁気帯びの原因と対策。もし症状が現れたら……?
「磁気帯び」とは、時計のムーブメントに磁気が帯びてしまうことを指し、その主な原因は、磁石や機器など、磁気を発しているものの近くに腕時計を置くことです。磁気を発するものは、例えば、カバンの留金のマグネットや電気シェーバー、イヤホンやスマホのスピーカーなどです。中でも、RYさんが最も気をつけなければならないと話すのが「IH調理器」。身近にあるものでダントツに磁力が強く、腕時計との相性は最悪。IHで調理をする際には、腕時計は外した方が良いでしょう。
持っている腕時計が磁気帯びしているかどうかは、「コンパス」(方位磁針)で確認することができます。磁気帯びしている時計にコンパスを近づけると、コンパスの針が時計に追従するように揺れ、磁気帯びしていない時計に針は反応しません。もし磁気帯びを確認した場合には、購入した時計店や時計修理店に依頼して、「磁気抜き」をします。概ね数千円かかることが多いようです。
とはいえ、腕時計と共に生活する上で「ずっと磁気に注意し続けるのなんて無理だ」という声もあるでしょう。そうした人に、RYさんは磁力の影響を受けにくい「耐磁性能」をもった腕時計をすすめます。時計が、どのくらいの磁気に耐えられるかについては、日本産業規格・JISに規定されていて、「非耐磁時計」「1種耐磁時計」「2種耐磁時計」に分けることができます。
非耐磁時計の保証水準が1600A/m(アンペア毎メートル)なのに対し、1種は4800A/m、2種は1万6000A/m以上、といった違いがあり、具体的に1種耐磁時計は磁気に5センチまで近づけても大丈夫、2種は1センチまで近づけても大丈夫、といった耐磁性能を持ちます。最近の時計は磁力に耐えられるよう考慮して設計されており、昔の時計に比べると磁気帯びしにくくなっているようですが、注意するに越したことはありません。
◆あり過ぎても困ることはない? 驚異的な耐磁性能を持つ時計はこれだ!
2種耐磁時計の保証水準より遥かに高い耐磁性能を持つ時計が存在します。まず有名どころはIWCの「パイロットウォッチ」や「インヂュニア」でしょうか。IWCのパイロットウォッチはその名の通り、飛行機を操縦するパイロットが使用するために製作されたモデルであり、磁力を発生する機器に囲まれるコクピットにおいても磁気帯びによって精度が狂わないよう高い対磁性能を誇ります。耐磁性能は4万A/mですので、2種耐磁時計の約2.5倍の耐磁性能を持つことになります。