地球上のすべてのものが元素で構成されていることを糸口に、さまざまな出土品についてその背景をひもとく企画展「元素でたどる考古学」が神戸市埋蔵文化財センター(神戸市西区)で開かれている。11月27日(日)まで。
「炭素(C)」、「カルシウム(Ca)」、「ケイ素(Si)」、「水銀(Hg)」、「鉄(Fe)」、「銅(Cu)」の6つの元素ごとに章を分け、それぞれが出土品にどのように含まれているかについて解説。土の中で分解されてしまう有機物や、カルシウムが溶け出してしまう骨は残りにくい一方、土器や石器は比較的長い年月、当時の姿をとどめていること、鉄や銅などの金属は、腐食してさびに覆われていることなどが分かる。最新の年代測定法や文化財を非破壊で調べる画期的な方法なども紹介している。
見どころの1つは、発掘品に残る赤色顔料。古墳時代までの日本列島では、水銀朱(硫化水銀)とベンガラ(酸化鉄)の2種類がみられる。主な展示品である名東遺跡(徳島市)出土の弥生時代中期の銅鐸には、文様のへこんだ部分などに水銀朱が付いており、かつて銅鐸表面が赤色だったことが想像される。
死者を埋葬する際に赤色を施す風習は、世界的にみられる現象で、日本列島の古墳時代では、埋葬施設の石室にはベンガラ、死者の遺骸には水銀朱を施すという使い分けが一般的になってくるという。
同センターの山田侑生学芸員は「神戸市灘区の西求女塚古墳の石室のように、ベンガラの上に水銀朱を塗り重ねるという例外的なパターンもあるが、産地が限られ、すりつぶすと鮮やかに発色する水銀朱には、ベンガラとは異なる意味があったようだ」と話す。
ケイ素のコーナーでは、天然ガラスの一種、黒曜石で作られた縄文時代の石鏃(豊岡市の堂ノ上遺跡)、人工ガラスで作られた弥生時代後期の管玉(丹波篠山市の内場山墳墓群)、古墳時代中期のガラス小玉(神戸市東灘区の北青木遺跡)など、使われていた当時の姿かたちを残した品々を観察できる。
◆令和4年度秋季企画展「元素でたどる考古学」
会場:神戸市埋蔵文化財センター(〒651-2273 神戸市西区糀台6丁目1 西神中央公園内)
会期:2022年9月23日(金)~11月27日(日)
開館時間:午前10時~午後5時(入館は4時半まで)
休館日:月曜と11月4、24日
入館料:無料
問い合わせ:同センター、電話078-992-0656。