腕時計の価格は、1万円以下で買える安価なものから、100万円を超えるような高級なものまで、ピンからキリまであります。基本的な役割は、すべて同じ「時を知る」ための時計ですが、そこには何百万、何千万、何億……と気が遠くなるような差があるわけです。では安価な時計と高級時計には、具体的にどういった違いがあるのでしょうか。登録者数が6万4千人を超える「腕時計YouTuber」であるRYさんが、『やさしい腕時計』(ラジオ関西Podcast)で解説しました。
◆価格差の一番の要因は、時計の心臓部「ムーブメント」にあった!
ブランド料や、時計を形作る材質の違いなどで腕時計の価格は変わってきますが、RYさんによると、一番価格に違いが出るのが「ムーブメント」です。「ムーブメント」とは、時計の心臓部となる部分で、それぞれの針を規則的に動かすなど「駆動」をつかさどります。車で例えるならエンジンが同様の箇所に当たり、外から見るだけではその価値はわかりにくいですが、このムーブメントにどれだけの手間暇がかかっているかでその時計の価値は変わってくるそうです。
では、安い時計と高い時計のムーブメントは何が違うのでしょうか。RYさんは、一番わかりやすい違いに「精度」を挙げます。例えば、数万円の一般的な機械式時計は、1日におおよそ40秒ほどずれることがあるといわれています。しかし、例えばロレックス「サブマリーナー」だと1日に±2秒ほどしかずれが生じず、一般的な機械式時計とは大きな精度差があるのです。
また、そのムーブメントが「汎用ムーブメント」なのか「自社ムーブメント」なのかが、価格に差が出る要素となります。汎用ムーブメントを使うというのは、簡単に言うと、腕時計メーカーが、ムーブメントを専門で製造するメーカーからムーブメントを仕入れて、そのまま自分達で作った時計の本体に入れて販売する、ということです。ムーブメントは一から作るとなると膨大な時間や設備投資、人材投資が必要ですが、汎用のものを使えば、低価格で時計を販売することができます。
こうした理由から、自社ムーブメントを使用する腕時計は、汎用ムーブメントを使う腕時計と比較し、高価になってしまうのです。ただし、精度がかなり変わるほか、ブランドの強いこだわりを感じられる点で、自社ムーブメントには高い価値があると考えられます。
100万円の時計でも充分に高価なのですが、腕時計の世界では1,000万円を超えるような、超がつく高級品も販売されています。では、次は100万円と1,000万円オーバーの腕時計の差についてみてみましょう。1,000万円クラスの腕時計に見られるのが、「複雑機構」と呼ばれる、一部の時計メーカーや一流の職人しか作ることのできない機能を持った時計です。
複雑機構として有名なのは重力の影響による狂いを生じさせないようにする「トゥールビヨン」や、時刻を音で知らせてくれる「ミニッツリピーター」などが挙げられますが、それらが付いているだけで平気で2,000万円、3,000万円という値段が付いてしまいます。果たして本当に必要な機能かどうかというと疑問が残りますが、RYさんは、「この領域になってくると、もう時計に実用性を求めるとかは遥かに超えて、『芸術性』でしかないですよね」と笑います。