政府の「働き方改革関連法」案により、時間外労働の上限などが設けられたことで規制が厳しくなりました。また、「働き方改革」の言葉とともに、「ワークライフバランス」という言葉を耳にする機会も多くなり、誰もが“やりがい”や“充実感”を得ながら働き、そのうえで健康で豊かな生活ができるよう、仕事と生活の調和がとれた社会の実現が求められています。
しかし現実は、長時間労働や過労によって心身の健康を損ねてしまう人がまだまだ存在します。“過労死”という最悪の事態を防ぐためには、一体どうしたら良いのでしょうか。過労死防止に関する啓発活動に取り組む、神戸合同法律事務所の相原健吾弁護士に聞きました。
――働き方改革によって労働環境は改善されているように感じるのですが、実際はどうなのでしょうか。
【相原弁護士】 会社も個人も、長時間労働に対する意識は少しずつ変わってきているとは思うのですが、過労死が減っているわけではありません。
実際に、厚生労働省がまとめた「過労死白書」を見ても、業務における強い心理的負荷によって精神障害を発病したとする労災請求件数は、現在も増加傾向にあり、令和3年度は2346件で、前年度と比べて295件の増加となっています。さらに、労災認定されたのは前年比21件増の合計629件となっており、1983年度の統計開始以来、3年連続で過去最多を更新しています。
コロナ禍の影響から、テレワークで働く方も増えてきたことで労働時間の管理が難しくなり、表向きはちゃんとしていても、実際は長時間労働になってしまっているという側面があるのではないかと思います。
――現在はどのような相談が多いのでしょうか。
【相原弁護士】 非正規雇用の待遇についてや、職場でのパワハラ問題、長時間労働など労働問題に関するさまざまな相談がありますが、過労死された方のご遺族からの相談も多いです。長時間労働が原因で過労死してしまう場合、一生懸命がんばっている本人には自覚症状がないということが多いのです。健康だと思っていても、ある日突然体調を崩し、倒れてしまう方も珍しくありません。
――過労死はどのようにして起こるのでしょうか。