草太によると、こうした扉の向こう側からは災いがやってくるため、自分が扉を閉めて鍵をかける「閉じ師」として旅を続けているのだそうです。
草太が軽いケガをしたため、鈴芽は家で手当てをしてやりました。すると、二人の前に突然、謎の猫・ダイジンが現れました。
「すずめ! すき」「おまえは じゃま」
ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太の姿は鈴芽の部屋にあった椅子に変えられてしまいました。この椅子は鈴芽が幼いころ使っていたもので、脚が1本欠けています。
ダイジンが逃げ出しました。ダイジンを椅子の姿になった草太が追いかけ、さらに鈴芽が追いかけます。ダイジンはするするとフェリーに乗り込み、草太と鈴芽も乗船します。フェリーは四国行きで、愛媛県の港に着きました。
鈴芽は同い年の少女・千果と仲良くなります。千果の実家は民宿で、泊めてもらえることになりました。
草太は椅子になったままです。
「人の心の消えた寂しい場所に“後ろ戸”は開くんだ。後ろ戸からは災いが出てくる」
草太が後ろ戸と呼ぶ扉は愛媛にもあって、赤黒いミミズが噴き出していました。鈴芽が草太の代わりに扉を閉めて、鍵をかけます。
民宿のテレビを見ると、ワイドショーが「こんなところに猫がいる!」として明石海峡大橋のケーブルづたいに歩くダイジンをとらえた映像が放送されています。猫のダイジンは神戸へ行こうとしているようでした。鈴芽たちは神戸に向かいます……。