今こそ知っておきたい「反戦ソング」 ザ・タイガースや美空ひばりら時代のエポックメーカーが歌った魂の歌 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

今こそ知っておきたい「反戦ソング」 ザ・タイガースや美空ひばりら時代のエポックメーカーが歌った魂の歌

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 戦争の足音が迫る時代に痛烈な皮肉をこめた「お洒落禁物」からベトナム戦争反戦歌として歌われた「死んだ男の残したものは」、そして、昭和の反戦意識の高さを物語るザ・タイガース「廃墟の鳩」、美空ひばり「一本の鉛筆」まで……。

 これまでに歌われた反戦ソングの数々を、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。

戦争への抵抗、反省をもとに歌われてきた反戦ソングの数々(画像はイメージです)

【中将タカノリ(以下「中将」)】  最近、ロシアのウクライナ侵攻や平和が脅かされるニュースが多いじゃないですか。こういうときこそ、僕たちミュージシャンや文化人は声を上げるべきだと思うんです。

 たとえば日本には昔から数多くの反戦ソングが存在します。今回のこの番組(ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』)では、そういった反戦ソングの数々を紹介して平和について考えていきたいと思います。

【橋本菜津美(以下「橋本」)】 反戦ソングって触れたいけど、なんだか触れにくいイメージがありました。

【中将】 別に強烈な主張をする曲ばかりでなくていいと思うんです。

 たとえばディック・ミネさんの「お洒落禁物」。この曲が発表された1940年当時は日中戦争が深刻化し、日本が太平洋戦争、第二次世界大戦へと足を踏み入れていく暗い時代でした。「奢侈品(しゃしひん)等製造販売制限規則」が発令され、ぜいたく品が禁止されたことを受けて制作された曲なんですが、歌詞では「化粧も派手な衣装もやめよう。お洒落は敵(かたき)だ」と歌いながら、サウンドは当時最先端だったジャズ。ギリギリ、ルールに従いながら政府からの命令を笑い飛ばすようなエッジのきいた作品でした。

【橋本】 ノリノリでお祭り始まりそうですもんね(笑)。

【中将】 ディック・ミネさんは当時としては進歩的で、反骨精神のある人だったんですね。これは植木等さんの証言ですが、戦時中に軍部の圧力で他のジャズシンガーが坊主頭で国民服着て歌うようになっても、ミネさんだけは白いスーツの胸に赤いバラを刺してステージに立っていたそうです。当時、少年だった植木さんはそれを見てシビれたと。

【橋本】 身をもって「お洒落禁物」に立ち向かった人だったんですね! でもそんな時代って本当に嫌ですね……。

【中将】 現在でも法律による表現規制はありますし、常にアンテナを張り巡らせてないと自由って失われていくんだと思います。「お洒落禁物」は戦争や平和を直接歌った内容じゃないし、むしろちょっと面白いテイストだけど、広い意味での反戦ソングと言えるでしょう。

 次にご紹介する高石友也さんの「死んだ男の残したものは」(1967)は、先ほどとは正反対の深刻な反戦ソングです。

 戦争によって無残に亡くなった人々が残したものを6番にわたって淡々と歌う内容ですが、この曲はもともと、アメリカがベトナム戦争に本格参加した1965年に開催された反戦集会「ベトナムの平和を願う市民の集会」のために詩人・谷川俊太郎の呼びかけで作られたものでした。

【橋本】 このメッセージは重いですね。3番の「死んだ子どもの残したものは ねじれた足と乾いた涙」とか……でも最後に「死んだ歴史の残したものは 輝く今日と また来る明日」となるのがせめてもの救いですね。谷川さんの詩人としての技量も感じました。


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