ーー活動を始めたきっかけは?
【金子弁護士】 もともと青蓮寺の住職さんとは、丹波市でコミュニティFMを立ち上げる際の仲間で、将来的に悩みごとに応える番組をしたいと話していました。しかし、よく考えてみれば「今日からでもお寺で悩みごと相談ができるのではないか?」という話になり、始めることになりました。
従来より、お寺は檀家(だんか)さんや地元の方が日頃の愚痴や相談をしにくる場所でもあるのですが、最近はその機能を果たせていないと住職が悩まれていました。「お寺を気軽に相談できるような場所に戻したい」という思いもあって、この悩みごと相談は始まりました。
ーー相談に訪れる方はどのような悩みを抱えてらっしゃるのですか?
【金子弁護士】 家族や近所のもめごと、お金や不動産の心配、お墓の相談などが多いです。これらの悩みはコロナ禍前からあり、今も変わりません。来てくださるのは60〜70代の方が多いのですが、なかには30代くらいの働き世代の方もいらっしゃって、仕事や生き方、心にある悩みを相談してくださる方もいます。
和尚と弁護士が相談ごとをお聞きするメリットは、“さまざまな角度からお応えできること”にあります。たとえば、悩みや不安に対して、住職が難しい仏教の教えを分かりやすく伝えて解決できることもあれば、私が法律目線で解決に導くこともできます。
人生は思い通りにいかないことばかりです。社会ルールの法律と、お釈迦様や御祖師様(おそしさま)の知慧(ちけい)を持って、少しでも寄り添うことができたらと思っています。
ーー目指す弁護士像はありますか?
【金子弁護士】 特定の法律の分野について極めたいとは思っていません。法律は悩みの半分くらいしか解決できないので、あくまでも弁護士資格は道具として、悩みをトータルで解決できるような人間になりたいと思っています。
◆金子敬之(かねこよしゆき)弁護士 近畿フロンティア法律事務所(兵庫県丹波市)
大阪大学法学部を卒業後、神戸大学で法務博士課程を修了。平成19年から兵庫県弁護士会で活動し、日本弁護士連合会の「司法の過疎化をなくそう」という取り組みのもと、丹波市内で唯一の弁護士として赴任した経験を持つ。現在は弁護士法人近畿フロンティア法律事務所を設立し、さまざまな法律相談に対応するほか、消費者のための講演など、地域に根ざした取り組みを行う。