「ヤベえもの見つけてしまった……」と、神戸市に所在する『八時間労働発祥之地』の画像が添えられたツイートが話題に。「どういう目的?」「6時間だったらもっと良かったのに」と、SNS上ではさまざまな波紋を呼びました。
謎の記念碑『八時間労働発祥之地』とは、一体どういうものなのか? 建立した兵庫労働基準連合会に話を聞きました。
■時は百年以上前にさかのぼる……「8時間労働」が誕生した神戸のとある事件
『八時間労働発祥之地』とは、神戸ハーバーランドに建てられた記念碑のこと。労働基準法には「労働者に、休憩時間を除き一日について8時間を超えて労働させてはならない」とあります。この“8時間労働制”を巡る日本で最初の労働争議は1919年(大正8年)の9月中旬、川崎造船所(神戸市)にて勃発しました。
本社工場の労働者たちは、労働条件の改善を求めた要求を会社側に提出。しかし、これに対して当時の社長・松方幸次郎氏が回答しなかったことをきっかけに、不満が爆発した職工たちが同月18日からサボタージュ闘争をおこなったのです。
この事件をうけ、世界に通用する企業を目指していた松方氏は、欧米ではすでに定着していた8時間労働制を自社に導入することを決意。その後、神戸製鉄所や播磨造船所(現在の株式会社IHI)なども同制度を取り入れ、瞬く間に全国200社以上に広がりました。こうして日本に「8時間労働」という制度が定着したのです。
ちなみに、世界で初めて8時間労働の概念ができたのは1856年のオーストラリア。8時間労働を求める人々がおこなった、メルボルンでの大規模な行進の末に勝ち取った制度でした。
■記念碑が誕生したのはわずか20年前
サボタージュ事件が勃発したのは100年以上前のことですが、記念碑『八時間労働発祥之地』が建立されたのは1993年(平成5年)と、比較的最近の出来事。このタイミングになった理由……。それは、1992年(平成4年)に1週40時間を法定労働時間とした「労働基準法改正案」が国会に提出されたからでした。