今夏、全国の盆踊り会場で老若男女が「ダンシング・ヒーロー」「クックロビン音頭」などを踊っている姿がSNSで拡散され話題になりました。なぜ令和の今になって昭和の歌謡曲やアニメソングが“盆踊りソング”として脚光を浴びているのでしょうか? 知られざる令和の盆踊り事情について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が紹介します。
【中将タカノリ(以下「中将」)】 今年の夏、盆踊り会場で昭和の歌謡曲やアニソンで踊っている人たちの動画がSNS上で話題になりました。
【橋本菜津美(以下「橋本」)】 そんなことがあったんですね……でも盆踊りなの、なぜ昭和歌謡だったんでしょうか? 盆踊りって地方ごとに昔から伝わる「〇〇音頭」みたいなのが延々とかかっているイメージでした。
【中将】 特に話題になった東京の「神田明神納涼祭り」などは、いわゆる「和モノ」のDJに通じたクラブDJたちが関わっていたようですね。歌謡曲で踊る新しい文化が盆踊りという場所に持ち込まれた感じでしょうか。
それに1970年代、1980年頃までは歌謡曲やアニソンの枠内で若者向けに新しい盆踊りソングがけっこう作られていたので、それを知ってる世代はあまり違和感なく受け入れられるのかもしれません。
【橋本】 マジですか!? 私は1993年生まれだからなのか、あんまりピンとこないですね……。
【中将】 知らずに聴いてるものは多いんじゃないかな? たとえば「クックロビン音頭」(1982)なんてどうでしょう? アニメ『パタリロ!』のエンディングテーマになった曲ですが、「誰が殺したクックロビン」という強烈なフレーズは一度聴いたら忘れられないと思います。
【橋本】 わ! これは聴いたことありました! たしかに「ドラえもん音頭」(1979)みたいな曲って子どもの頃によく聴いてましたね……。
【中将】 ちょっと前だと「オバQ音頭」(1965)とかね。子ども向けの人気アニメにはこういう「〇〇音頭」が付き物でした。もちろん当時の盆踊りでも使われていたので、再流行しているのを聴いて懐かしく感じる人も多いでしょうね。
僕の世代ではアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』の夏限定エンディングテーマだった「アラレちゃん音頭」(1981)とか懐かしいです。アニメ系の盆踊りソングってだいたい主役の声優さんが歌ってるので、子供にはとても馴染みやすいですよね。
【橋本】 これも知ってる……! 私は子どもの頃、盆踊りの輪に積極参加するほうだったんですが、この曲で踊った記憶がよみがえってきました(笑)。アニメって再放送もあるから幅広い世代に影響してそうですね。