【阪神間モダニズム】 芦屋・西宮に見る「名建築」の歴史と魅力 フランク・ロイド・ライトや片岡安設計も | ラジトピ ラジオ関西トピックス

【阪神間モダニズム】 芦屋・西宮に見る「名建築」の歴史と魅力 フランク・ロイド・ライトや片岡安設計も

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■旧山本家住宅《西宮市》

旧山本家住宅(西宮市)

 JRさくら夙川駅から北へ徒歩約10分、正面に甲山(かぶとやま)を見ながら進むと、左手にレトロな雰囲気をまとった邸宅が見えてくる。それが旧山本家住宅だ。

 400坪の敷地に建てられた和洋折衷の建物で、ゆとりのある生活感を感じられる。昭和13(1938)年に、三越に建築部があった時代の注文住宅だそうだ。

 初代当主から5代目にして山本家がオーナーとなったが、使い勝手良く設計されていたため、目立った改装や増築などはされていないとのこと。ソファー、蓄音機、ピアノ、つくり付けの家具などもそのままで、当時の雰囲気を感じることができる。

 丁寧なつくりの欄間も人気のポイントで、逸話が残っている。建築時に何件も見積もりをとった際、その中で一番高い金額を提示した業者を選んで建てたのだとか。トイレはすでに水洗式、女中さんが来客を伝える内線電話など、当時としては最先端の設備もかなり整っていたという。

 1階は和の雰囲気、2階は少し洋の雰囲気で構成されていて、庭園や茶室もあり風情たっぷりだ。当時この地域には多くのモダンな洋館が建っていたが、この旧山本家住宅が現在も残っているのは、和室が多いつくりにポイントがある。終戦後、多くの洋館は進駐軍に接収されたが、ここは和室が多いため進駐軍にとって使い勝手が悪く、接収されなかったとのことだ。

 1938(昭和13)年の建物ということで、阪神間モダニズムのほぼ最後の時期の建物と言える。

■今津六角堂《西宮市》

今津六角堂(西宮市)

 阪神今津駅から南へ徒歩約10分、西宮の老舗酒蔵・大関の本社工場のすぐ近くに建っている。明治5(1872)年、日本で最初の近代的学校制度「学制」が政府により定められ、翌年、寺などを間借りしたかたちで今津小学校が開校。その後、明治15(1882)年に洋風の校舎(六角堂)が新設された。

 この時代、国や地域の力で立派な小学校を建築するのは難しい状況だったが、教育に熱心だったこの地域の有志の寄付により実現した。後世になって取り壊しの話も出たが、地域住民の熱心な保存活動により今も存続している。(内部は公民館や幼稚園として使用されている)

 特徴は、やはり名前の由来にもなっている六角形の張り出し。正面中央に突き出していて、なんともモダンなイメージを受ける。明治前期の洋風学校建築として兵庫県内ではもっとも古い遺構であり、歴史文化的景観価値として貴重なものと言える。

 阪神間モダニズムと呼ばれる建築物。紹介したのはほんの一部。数少なくなったとは言え、阪神間にはまだまだこの時代の貴重な建築物が残っている。12月11日まで、これらを巡って集めるスタンプラリー(主催:阪神間連携ブランド発信協議会)も開催中。クイズを解いてデジタルスタンプを集めるもので、抽選で景品も用意されている。


阪神間モダニズム 現代に受け継がれる独創美 – 知る・見る・巡る 〜魅力再発見〜

※ラジオ関⻄ 2022年11⽉13⽇放送 「見る・知る・巡る 魅力再発見 阪神間モダニズム」より

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