――「任意後見制度」とはどのような制度なのでしょうか。
【種谷弁護士】 本人が元気なうちに、自身が衰えたあとの財産管理や身の回りの世話を依頼することができます。この制度を利用することで、元気なうちに自分の希望を伝えることができます。
また、任意後見制度は本人が亡くなると効力がなくなるので、亡くなったあとに発生するさまざまな事務手続きを依頼する「死後事務委任契約」もあわせて行っておくと良いでしょう。
死後事務委任契約では、行政の手続きをはじめ、葬儀・埋葬関連の手続き、施設の利用料や病院代などの支払い、光熱費などの契約の解約や、知人・親族への連絡など、それぞれにあわせた契約手続きを結ぶことができます。
「任意後見制度」や「死後事務委任契約」は、おひとりさまの方にとって非常に有効な制度です。それ以外にも、遺言書を作成しておくことにより、亡くなったあとに自分の財産を有効に活用することも可能です。
このように、生前から死後にかけてサポートしてくれる、かかりつけ医師ならぬ「かりつけ弁護士」を持つことは、老後を安心して過ごすためにも大切になってくるでしょう。
◆種谷有希子(たねたにあきこ)弁護士 新神戸法律事務所(神戸市中央区)
京都大学法学部を卒業後、2001年に弁護士登録。3人の子どもを育てながら、ハワイ大学のロースクールへの留学も経験し、おもに高齢者法と信託法を学ぶ。超高齢社会におけるホームロイヤー制度の普及など、高齢者福祉問題に取り組む。