2024年、20年ぶりに新紙幣が発行される予定です。現在使われている千円札、五千円札、一万円札はそれぞれ描かれる人物が変わるなど大きくデザインが変更され、最新技術を用いたホログラムを導入することで偽造をより難しくさせています。
紙幣が偽造防止目的のため定期的に刷新されるいっぽうで、500円以外の硬貨は長いあいだデザインが変わっていません。ただ10円に関しては、ふちがギザギザになった「ギザ10(じゅう)」と呼ばれるものがかつて存在していました。今やレアとされ、モノによっては10円以上の価値があるそうです。なぜ「ギザ10」は存在し、現在の10円硬貨にギザギザは無いのでしょうか? 造幣局の広報に聞きました。
「現在のデザインの10円硬貨が発行されたのが1951年(昭和26年)のこと。発行された当初はふちにギザギザが施されており、このタイプは1958年(昭和33年)まで発行されていました。また、1956年(昭和31年)のみ製造されていないためギザ10が発行されていたのは約7年間というわずかな期間でした」(広報)
ギザギザが施された理由を聞くと、
「理由は2つあります。1つ目は“最高額の貨幣にギザを入れていた”ことです。今ではありえない話ですが、当時は10円が最高額だったのです。2つ目は“悪用の防止措置”です。原料である銅の価値が高騰していたことで、10円硬貨をフチから削り転用・転売する者もいたそうです。ギザにすることで削ったことが明らかになるため、悪用の抑止にもひと役買っていました」(広報)
では、なぜギザ10は無くなってしまったのでしょうか?
「昭和30年にギザあり孔(あな)なしの50円硬貨、1957年(昭和32年)に100円硬貨が登場したことによります。10円、50円、100円にギザがあったため、区別がつきにくくなりました。そこで、1959年(昭和34年)に“ギザなし10円硬貨”と“ギザあり孔あり50円硬貨”が発行され、孔とギザを併用させることで全ての硬貨が触るだけで区別が可能となったのです」(広報)
現在、ギザ10にはいったいどれくらいの価値があるのでしょうか? とある古銭取り扱い店に聞くと、「未使用なら年代により1000円から最大2万円ほどで買い取ることはあるが、使用品に10円以上の価値がつくことはほとんど無い」とのこと。
実際にここ1年のヤフーオークションでのギザ10に関する落札結果を見てみると、「昭和27年の未使用品1枚→2600円で落札」を発見。使用品はまとめ売りされていることが多く「昭和26年から昭和33年の使用品各1枚・計7枚セット→4900円(1枚700円の価値)で落札」というものがあり、やはり未使用品は価値が高いことがわかります。
ただし、ギザ10発行最終年である1958年(昭和33年)は発行枚数が少ないことから使用品であっても値段がつきやすく、美品1枚で1000円、10枚セットが3200円(1枚320円の価値)で落札されていました。
レアなギザ10の中でも、価値がつくのはほんのひと握り。もし財布や家の中でギザ10を見つけたら、買取や落札相場をチェックしてみるのもいいかもしれません。
(取材・文=宮田智也 / 放送作家)