第二次世界大戦後、ソ連の強制収容所(ラーゲリ)に捕虜として収容された日本人たちの物語。過酷な労働を強いられながら家族を思い続け、再会を願った男の実話を映画化した、『ラーゲリより愛を込めて』が12月9日(金)、全国東宝系で公開されます。
1945年、満州ハルビン。山本幡男(やまもと・はたお)と家族が戦火の下で逃げ回っています。爆弾が落ちて山本はけがをしましたが、心配する妻・モジミに子どもを連れて逃げるのを優先するよう促します。
「お父ちゃん!」
「すぐにまた会える。日本で落ち合おう」
この言葉を聞いたモジミは後ろ髪を引かれながら子どもの手を引いて避難しました。
マイナス40度を下回る厳しい寒さのシベリア。山本たちは酷寒の地に連行され、森林伐採や農作業をさせられています。
第二次世界大戦終了後、日本人およそ60万人がラーゲリと呼ばれるシベリアの強制収容所に送り込まれていました。
山本は、身に覚えのないスパイ容疑でラーゲリに収容されました。
劣悪な環境のもと労働を強いられながら山本は、日本にいる妻・モジミや子どもたちと一緒に暮らす日々を信じ、耐えています。与えられる食料はほんのわずかなスープと黒いパンだけです。
ラーゲリでは栄養失調や過酷な作業で命を落とす者や、自ら命を断つ者がいました。
松田は戦場で足がすくんで戦闘に参加できず、目の前で友人を亡くしたことで心に傷を負っています。
相沢は軍人時代の階級「軍曹」を振りかざして山本を敵対視しています。
労働先で会った子犬クロをかわいがる新谷は足が不自由なため徴兵されませんでしたが、漁の最中に捕虜にされました。
山本と同郷の先輩・原は、ラーゲリで追い詰められたことで心を閉ざしてしまっています。
こうした仲間たちを山本は励まし続けます。
「これはね、戦後の混乱の中で起こった不幸な出来事に過ぎません」
「ここには意味もなく捕まっているやつらがたくさんいます」
「生きるのをやめないでください」
山本の言葉は、抑留されている男たちの心を次第に溶かしていきます。