脳卒中の後遺症と言えば、身体の麻痺が一般的に広く知られていますが、ほかにもさまざまな症状がみられます。なかでも、比較的高い確率で発症すると言われているのが“言語障害”です。意外と知られていない言語障害について、種類やリハビリ方法など、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)の吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――脳卒中の後遺症に“言語障害”がありますが、これはすべての脳卒中で現れるのでしょうか?
すべての脳卒中で見られるわけではありません。言語を司る場所が障害を受けた際に言語障害が現れます。
――言語障害にも種類があるのでしょうか?
言語障害は大きく分けて2通りあります。1つは、言語を作れなくなったり、言葉を理解できなくなったりする“失語症”。もう1つは、頭の中では話したいことを理解できているにもかかわらず、口が回らないためにうまく話せなくなる “構音障害(こうおんしょうがい)”です。多くの場合、手足に麻痺が出ると同時に顔面にも起こるため、構音障害はよく見られる症状と言えます。一方の失語症は、脳の言語中枢に障害が出た場合に見られる症状です。
――失語症とは、言葉そのものを失ってしまう症状を言うのですか?
ものの名前がわからない、そのものを理解はできていても赤ん坊のように言葉が出てこない、という状態を指します。「記憶をなくす」「左右の判別がつかなくなる」など他の高次脳機能障害は伴いませんので、認知症の症状とは異なります。失語症は純粋に⾔葉の問題だけです。
――構音障害は周囲にも伝わりやすいですが、失語症は症状の度合いが伝わりづらいですよね。
特に“感覚性失語”と呼ばれる、言葉の理解力を司る場所が強く障害を受けた場合は、リハビリも非常に難しいです。人の話している言葉の意味がわからなくなってしまいますが、ジェスチャーなどを通してコミュニケーションを取ることはできます。ただこの場合、完全に回復することは非常に難しいですね。