――憲法が守られているかどうかを監視するのは、誰の役割なのでしょうか?
【藤本弁護士】 一切の法律、命令、規則、または処分が憲法に違反していないかどうかを審査する「違憲立法審査権」という権限は、裁判所が持っています。国会が作る法律や、内閣が行う政策が憲法に違反していないかどうかをチェックする役割を持つため、「憲法の番人」とも呼ばれています。
仮に、裁判である法律が「違憲」と判断された場合、その法律は以降の裁判で適用されなくなりますので、国会で作り直さなければならなくなります。
――最近ですと「選択的夫婦別姓」の法制化について、夫婦同姓が憲法違反かどうかの裁判が行われて話題になりましたよね。
【藤本弁護士】 「夫婦同姓を定める民法が憲法違反かどうか」が争われた2021年6月の国家賠償請求訴訟では、最高裁判所において、2015年12月の判決に続き2度目となる「合憲」判断がなされました。
世界的にみても夫婦同姓なのは日本くらいですし、国内においても夫婦別姓を求める声が高まっていたこともあり、少し変化が見られるかと思っていたので残念です。ただ、夫婦別姓を求める声が高まっているとはいっても、日本国民の関心はまだまだ少ないため、国民がより興味を持つことが重要でもあります。
考え方や感じ方は人それぞれ違います。多様な人間が共生するための土台ともいえる存在が「憲法」です。ぜひ、日本のことを考えるきっかけのひとつとして、憲法について知っていただきたいと思います。
◆藤本尚道(ふじもとまさみち)弁護士 ハーバーロード法律事務所(兵庫県中央区)
神戸大学法学部を卒業後、1986年に弁護士登録。2004年度兵庫県弁護士会副会長・会長代行、兵庫県立大学客員教授など歴任。現在は、兵庫県弁護士協同組合の理事長を務めながら兵庫県弁護士会の広報活動にも力を注ぐ。神戸市中央区にハーバーロード法律事務所を開設。