油に関わって144年という老舗企業が兵庫県姫路市にある。ENEOS大手特約店「横田石油」だ。現在は、東の神戸市垂水区から西の姫路市網干区まで、兵庫県内で14店舗のサービスステーションを主に運営している。
同社の横田昌彦社長の先祖はもともと武士階級。姫路藩最後の殿様・酒井忠邦公に大船頭としてつかえていたが、明治維新で藩が消滅する際に与えられた恩給を元手に、1878年(明治11年)、当時の飾磨県で油屋を始めたのが起こりだそうだ。
油とひと口に言っても商品は時代によって変遷。最初は菜種油やしょうゆ、次にランプ用の灯油。ランプが電灯に置きかわると灯油の販売量は激減したが、幸い、その頃から漁船などの船舶が軽油エンジンを搭載し始めたことで事業が継続できたという。
給油所第1号店は1929年(昭和4年)に姫路市飾磨区で開設。臨海部に進出してきた重厚長大企業に重油や潤滑油を納入して事業の土台を固め、その後の自動車社会の進展とともにさらに業績を伸ばしていった。
ところが、今や時代の流れはカーボンニュートラル。ピークだった30年前に比べると、全国で6万店あったガソリンスタンドは半分の3万店を切るまでに激減。同社も同様に、生き残りを賭け、32店から半数以下へと合理化を進めてきた経緯がある。
CO2と水素から製造する「液体合成燃料」の一刻も早い商用化が待たれるところだが、そんな怒濤(どとう)の時代にあっても同社が忘れないのが、「誠意、正直、責任」の3信条。戦時下には商売抜きに石油を供給し続けたという誇りを胸に、「今後、エネルギーがどのように変わろうとも柔軟に対応できる企業であり続ける」と兜の緒を締める。
(取材・文=播磨時報社)
◆横田石油株式会社
姫路市飾磨区恵美酒147横田ビル3F
電話 079-233-0620
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