めでたい場に飾られた洲浜(すはま)台という飾りの一部とみられ、当時の文献と照らし合わせるとサイズが小さめであることから、同学芸員は「子どもの神である若宮様にふさわしいようにスケールダウンして作った」と推測。「若宮神社創建の際、卓越した技術を持つ職人にオーダーし、お祝い品として納められたのでは」とみる。
平安時代に作られた洲浜台は、歌会や婚礼、長寿の祝いなどの席のために1回だけ展示された後は保存されることはなかったという。
同学芸員は「『平安の正倉院』と称される若宮神社に納められたからこそ、タイムカプセルのように伝世した貴重な品。春日大社に伝わる奈良時代の美術工芸品と異なり、若宮神社のものは平安時代の流行が感じられ、当時最先端のモダンスタイルだったのだろう」と話す。
今回の展示では、現代の名工がよみがえらせた6点の復元品も紹介。人間国宝(彫金)の桂盛仁さんが手掛けた「金鶴…」の復元品をはじめ、太刀、平胡籙(ひらやなぐい、矢を納めて携帯するための道具)なども古今の作品が並べてあり、見比べて楽しむことができる。
そのほか、やまと絵の傑作で、若宮神社が登場する「春日権現験記絵 巻第七、巻第十三」(国宝、鎌倉時代)、源義経が形見に残したと伝わる、手と腕を護る具足「籠手(伝源義経所用)」(こて、同)なども公開。
奈良国立博物館の井上洋一館長は「宝物は、多くの人の努力によって今日まで受け継がれてきた。そんな(宝物を守ってきた)人々がいたということにも思いを馳せてもらって、現代に残るすばらしい文化財を見てほしい」と話している。
◆式年造替記念特別展「春日大社 若宮国宝展 祈りの王朝文化」
会場:奈良国立博物館(〒630-8213 奈良市登大路町50)
会期:2022年12月10日(土)~2023年1月22日(日)
※前期展示は12月25日(日)まで。
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:1月2、9日以外の月曜日と12月28日~1月1日、1月10日。
観覧料(税込):一般1,600円、高大生1,400円、小中生700円
問い合わせ:ハローダイヤル050-5542-8600