ブランド名を「清らか野菜」にした経緯について、温井さんはこのように話します。
「クリーンな室内で、きれいな水で育てた野菜=清らかな野菜をイメージしたものです。その名の通り、担当者が栽培室内へ入る前には、手洗い消毒はもちろん、防塵(じん)服に着替え、エアシャワーを浴びて入室します」。
収穫する野菜についても、「栽培中は農薬を使用しませんので、(洗うことさえなく)そのままでも食べていただけるほどきれいな野菜です。土耕栽培と比べ、土汚れや虫がつかないという特徴もあります」と”清らかさ”に胸を張ります。
収穫量は、試験栽培当時は一日あたり約300株でしたが、現在は1500株と、当初の5倍に増えました。事業として順調に推移しています。系列の百貨店では試験栽培時から取り扱いを開始。その後、沿線のスーパー、系列ホテルの食材としても利用するなど展開を広げています。
また、「はんしんまつり」を初めとする鉄道関連イベントでも積極的に販売。周知にも注力しています。来場者の反応を尋ねると、「まだまだ驚く方も多くいらっしゃいます」としつつ、「阪神(電鉄)が高架下でレタスを作っていることをご存じの方も増えてきており、『買ったことがあるよ』とお声掛けいただくこともありました。『おいしい』『日持ちがする』との声も頂戴します」とのこと。鉄道ファンの中での認知度も徐々に上がっているようです。
そんな清らか野菜の強みについて、温井さんはこのように明かします。
「消費者までの距離が近く、新鮮なことです。例えば今回のイベント(はんしんまつり)の場合、移動距離はわずか数百メートル。朝採れ野菜を産直状態でご購入いただけます」(温井さん)価格も、試験栽培開始時から10年以上変わらず、沿線住民への還元を忘れない姿勢も見せます。
現在は、レタス以外の栽培にも挑戦しているとのこと。「生鮮野菜としての取り扱いにとどまらず、加工商品としての可能性を検討し始めたところです」と前を見据えていました。
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「はんしんまつり」では、フリルレタスとグリーンリーフが、阪神電車のイラストをあしらった会場限定パッケージで販売されていました(サルサソース・レシピ付き、300円)。
丹波の黒豆とツナをあわせてサラダにしてみたところ、食感はやわらかく、鮮やかな色とパッケージの効果もあってか、普段全く生野菜を食べない子どもも完食したほど。水耕栽培のため、洗う際に神経質にならずに済むのもありがたい要素でした。
2022年9月からは、工場所在地である兵庫県尼崎市のふるさと納税返礼品として登録されています。“高架下の味”、今後のさらなる展開に注目です。
(取材・文=kidamaiko)