建物を建てる前の基本的な作業として、ボーリングを行って地下の地盤の様子を調べる。具体的には、75cmの高さから63.5kgのおもりを落下させ、鉄パイプ(標準貫入試験用サンプラー)を打ち込む。この鉄パイプを深さ30cm貫入するのに要した回数を、”N値(エヌち)”という。地盤の固さ、強さを示す。固い地盤(締まった地盤)ほどN値は大きくなる。同じN値でも土質によって締まり具合は全く違う。以下の(表1)をご覧いただきたい。
この表からもわかるように、同じN値でも砂層と粘土層では締まり具合が違うことがわかる。N値が粘性土なら4、砂質土なら10を下回る地盤は軟弱地盤と呼ばれ、建設基礎としては何らかの検討が必要となる。N値が50以上は良好な支持層といわれる地盤である。地盤的には砂礫(されき)層(礫=砂よりも大きい岩石片、小石)が安定している。砂れき層は粘土・砂・石が混じり合っているので形状が変形しにくい。
液状化現象が起こる土地の目安として、地表から10m以内に4m以上の砂層があれば可能性が高い。地中では地下水が流れているが、地下水が地表に近いほど砂層では液状化現象が起こりやすい。地下水の高さは一定ではなく、時期によって異なってくる。
■「平地」は決して平らではない
次に地形。平地・平野といえば、どこも同じように平坦だと思われるかもしれない。しかし、平地・平野には凸凹がある。決して平らではなく、大きな高低から微高低まで幅広い。当然ながら水害から逃れるには標高の高いところがいいのは言うまでもない。問題は微低地のある場所である。
昔、川が流れていたが埋め立てられた場所は現在も地下水(伏流水)が流れていることが多い。この地形を旧河道というが、旧河道は少し低いことが多く大雨の時は水が真っ先に流れてくる。2019年10月12日の台風19号で、神奈川県川崎市武蔵小杉駅付近の47階建てのタワーマンションが浸水し、長期にわたって停電が続いたことは記憶に新しい。このマンションは旧河道の上に立てられており、河川水が溢れたときすぐに浸水したのだ。