作詞家の松本隆と歌手のクミコが、ばんばひろふみがメインパーソナリティーをつとめるラジオ関西の番組にゲスト出演。2人の出会いや、それぞれが思う“歌”の力について思いを語った。
この2人の出会いは、約20年前。松本が2000年にリリースされたクミコのアルバム「AURA（アウラ）」を鈴木慶一とともにプロデュースしたことがきっかけだという。当時について松本は「そのとき、すでに（プロデュースするのが）久しぶりだったんだけど、わりと良いのができて、彼女の人生というか進路が（良い意味で）変わっちゃって、悪いことをしたなと（笑）」と述べれば、クミコも「ずっとアマチュアみたいな気持ちで歌っていたんですが、『売れたいと思わないと売れないよ』と（松本さんに）言われて……知らない人の前できちんと歌い手として歌う、という気持ちが希薄だったので人生は変わりましたね。きちんとやっていこうと（思った）」と振り返る。
そして、その10年後である2010年に、クミコは「INORI〜祈り〜」がヒットし、紅白に初出場。この歌は、広島平和記念公園にある原爆の子の像・佐々木禎子（さだこ）さんの生涯を綴った歌で、クミコはこの曲のヒットを機にチェルノブイリを訪問しウクライナの人々とも交流を持つようになったという。2016年には、チェルノブイリ博物館で開催された『チェルノブイリ博物館折り鶴交換式典』で松本隆さん作詞の「鳥の歌」を披露。この歌はスペインのカタルーニャ民謡で、松本が日本語の歌詞をつけたものとなるが、松本は次のように歌の秘話を明かした。
「パブロ・カザルス（チェリスト）が演奏する『鳥の歌』を聴いて、そのときはまだ誰に歌ってもらうか決まっていなかったけど、“火をつけたいな”と。それで、ちょうどクミコさんとアルバムを作っていた時期だったので、こういうのあるよと言ってみたら（クミコが）『鳥の歌』を歌うことになったんですよね。その後、スペインでF1が開催されたとき、そこに彼女が招かれてたんですが、現地で僕が作詞した日本語の『鳥の歌』を歌ったんです。さらにチェルノブイリ博物館でも日本語の『鳥の歌』を歌っている。僕の日本語曲は各国いろんな所でいろんな人に聴かれているんですよね。それでチェルノブイリの人も泣いているし……やっぱり、彼女の歌には言語を超越する人の心を動かす何かがあるんでしょうね。日本語のままでも通じる何かがあるんだと思います」（松本）
このようにウクライナとの交流を持つクミコだが、昨年、「愛しかない時」のレコーディング直前にロシアによるウクライナ侵攻が始まった。この現在の状況についてクミコは「本当に早く終わって欲しい」と胸を痛める。
「（チェルノブイリ訪問の際に）子どもたちと遊んだりもしたけど、あの子たちは今どうしているんだろうと。ただでさえ前々年のクリミア侵攻の余波で道も建物も壊れているのに、そこにまたミサイルが落ちて……どうしたらこの国がまた元に戻るのかと、自分のことのように気持ちが落ち着かないです」（クミコ）
そう話すクミコさん自身も、2011年3月11日に宮城県・石巻市で行われたコンサートで東日本大震災に被災。「もともとボーッと生きていたのに、次から次にそういうことに出会うと、何か（使命のようなものが）あるんじゃないかと思う」と話すクミコに対し、松本は「1週間くらい連絡が取れなくて、ツイッターも更新がないし、生きてるんだか死んでるんだか……確か石巻でコンサートだったよな、と心配しましたよ。その後、仙台まで電力が復旧したからツイッターの投稿ができるようになったみたいで、それを見て『生きてて良かった』と思いました」と当時の心境を振り返っていた。
今回「歌の持つ力」について語った松本とクミコは、2月19日（日）に兵庫県芦屋市のルナホールで『クミコ sings 松本隆songs ～松本隆のことばとうた～』を開催。第一部では松本が作詞した「鳥の歌」「しゃくり泣き」などを披露した後、松本とクミコがトークセッションを行う。また、第二部ではクミコが歌うシャンソンの定番を存分に楽しむことができるという。開演は午後3時30分から、チケットは全席指定で6,500円（税込み）。イベントの詳細はクミコの公式サイトや各プレイガイドを参照。
