通信販売の大手・株式会社フェリシモ(神戸市中央区)の本社ビル「Stage Felissimo」2階に、新しいスタイルのレストラン「Sincro」が2023年1月オープンした。「食の劇場」をコンセプトに、約3か月のプロジェクトごとに料理のジャンルやカテゴリー、レシピを考案する料理人が変わるスタイルで、単に料理を味わうだけでなく新たな食体験を楽しむ空間となる。
こけら落としとなる第1回のプロジェクトは、国内外で活躍する3人の若手料理人が参加。いずれも日本料理が専門の中東篤志さん、酒井研野さん、崎楓真さんが、兵庫県産などの厳選した食材を使ったメニューを考案した。「おいしさ いろいろ ちょっとずつ」と、あれもこれもと欲張りな思いを叶える「cobacci cuisine(コバチ キュイジーヌ)」と名付けたスタイルで提供される。
取材に訪れた日の1品目は中東さん考案の「冬の裏六甲」。兵庫県産の冬野菜と菜の花を六甲牛のローストビーフに添えた。中東さんは「六甲おろしが吹く南側とは違い北側は穏やかで、緑豊かな場所で牛が育てられている。裏六甲の季節感を味わってほしい」と話す。黒い器に散らされたスパイスは六甲山から見る神戸の夜景をイメージしたという。ただ、「季節が進むにつれてとれる野菜も変わっていく。これまでもどんどんレシピが変わった。今後も進化していく」という。
崎さん考案の「蕪のみぞれ仕立」は、水にこだわった一品。神戸ウォーターがだしの力を引き出してくれるといい、やさしく炊き上げた聖護院かぶらをさらに揚げ、同じ蕪のすり流しにした。柚子こしょうで味の変化も楽しめる。
「鶏のあられ揚げ」を考案した酒井さんは、養父市の朝倉山椒を取り入れた。「産地では一粒ひと粒丁寧に収穫されている。香り豊かでアクセントになる。甘酸っぱい餡とあられのざくざくとした食感を楽しんでほしい」という。
レシピの考案にあたり3人は実際に産地に足を運び、生産者から話を聞くなどした。前菜からデザートまで、「お客さまを楽しませることに心を砕いた」という3人の思いと、その料理が提供される空間、そして会話が「シンクロ」して、その時々限りのかけがえのない「ストーリー」が生まれる。