「姫路城」(兵庫県姫路市)の世界遺産登録30周年を記念し、5月に『平成中村座姫路城公演』が実施される。同城の三の丸広場に江戸時代の歌舞伎の芝居小屋や出店を再現するもので、歌舞伎俳優の中村勘九郎さんと七之助さんらが出演。姫路にちなんだ演目を披露する。
平成中村座は、2000年、歌舞伎俳優の十八世中村勘三郎郎(当時、勘九郎)さんの「歌舞伎を楽しんでほしい」との思いを実現する形で、東京・浅草にて初興行が実施された。
組み立て式・移動可能な芝居小屋で、これまでに大阪や福岡など国内各地をはじめ、アメリカ・ニューヨークやドイツ・ベルリンなどでも上演されてきた。勘三郎さんが亡くなった後は、息子で長男の六代目勘九郎さんと次男の七之助さんがその思いを引き継ぎいでおり、兵庫県内では初めての公演となる。
姫路城は、1993年12月、奈良・法隆寺とともに日本で初めて世界文化遺産に登録され、今年で登録30周年を迎える。芝居小屋は、同城の天守を望む三の丸広場に設置。1609(慶長14)年に建てられた江戸時代の天守閣の前に江戸の芝居小屋が再現されるという“歴史的”とも言える公演に、歌舞伎ファンの期待も高まっているようだ。
1月30日に東京都内で開かれた製作発表で勘九郎さんは「世界遺産登録30年という記念すべきときに『平成中村座』を選んでいただいたことに感謝し、うれしく思う。ここで中村座ができたらいいなと思っていた」と話すと、七之助さんも「初めての場所で、中村座の歴史に新しい1ページをくわえられることがうれしい。(舞台が姫路城という)土地の力を借りて、本当の芝居をお届けしたい」と続けた。
昼夜二部公演で、姫路ゆかりの演目が並ぶ。昼の部の『播州皿屋敷(ばんしゅうさらやしき)』(原作:浅田一鳥)は、姫路城に伝わる「皿屋敷伝説」を素材にしたもの。夜の部には、坂東玉三郎演出の『天守物語』。泉鏡花原作の戯曲の中でも屈指の名作とされる。白鷺が羽を広げたようなその姿から「白鷺城(はくろじょう・しらさぎじょう)」とも呼ばれる姫路城の天守に隠れ住むといわれた姫の伝説を題材にしたもの。