2022年6月、兵庫県明石市沖で、操業中の漁船から男性(31)が転落し死亡した事故で、神戸海上保安部は14日、漁船内での安全対策を怠ったとして、船長(61)を業務上過失致死容疑で書類送検した。
男性は6月9日午前7時すぎ、明石市林崎の南西約3キロの海上で船びき網漁をしていた際、甲板で網を海中へ繰り出す作業をしていたところ、網につながったロープに右足を絡ませるなどして、海中に転落し死亡した。死因は溺死だった。
船びき網漁は、2隻の網船が網をひき、網の中にシラス・やイカナゴなどの小魚が入ったタイミングで、運搬船と呼ばれる漁船が網を上げて漁獲物を回収した後、再び網を海に投げる手法。
船びき網漁で網を投げる際、一度に網を繰り出すと、ロープや網が水中でもつれる可能性があるため、網を手で押さえるなどして、網を繰り出す速さを調整するという。
また、網は重さがあるため、足が絡まって海中転落する危険性が極めて高いことから、経験の浅い漁師ではなく、熟練者した技術を持つ漁師が網の繰り出し速さの調整を手で行うのが一般的とされている。
この漁船では、網を膝や足で抑えるという手法を取っており、死亡した男性は漁師としての経験が1年程度だったという。
神戸海上保安部は、船長がこうした手法に対する危険性を十分認識していながら、対策を怠ったと断定した。容疑について、船長の認否は明らかにしていないが、事実関係については認めているという。起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。