西宮市大谷記念美術館(西宮市中浜町)が新たに収蔵した作品を中心に、ゆかりのある作品をテーマごとに紹介する「新収蔵展 新たな作品とともに」が、同館で開催されている。2023年3月19日(日)まで。
今回の「新収蔵展」は、日本画・デザイン・洋画・版画の4つのジャンルで、西宮市大谷記念美術館が新たに収蔵したものを中心に、関連する作品合わせて115点を展示し、「あれもこれも楽しめる」。
開館50周年を記念してコレクションに加わったのは、江戸時代中期に活躍した西宮ゆかりの画人、勝部如春斎の六曲一双両面屏風「四季草花図・芦雁図」。勝部如春斎は、1721年、造り酒屋の次男として生まれた。狩野派の師に学んだとされ、西宮出身としては江戸時代に名を成したただ一人の絵師になった。狩野派の画風を守りながらも「如春斎の個性も感じられる」という。
誰もが一度は見たことのあるデザインを手掛けたグラフィックデザイナー今竹七郎の作品も展示する。同館は、今竹の没後、彼のデザイン作品やデザイン資料などの寄贈を受けたのをきっかけに、作品収集方針に「デザイン」が加わった。また今竹の長女・今竹翠氏からの寄付もあり、デザインに関するコレクションを「今竹デザイン文庫」とし、今年度は資料類を購入した。
会場には資料類と今竹がデザインしたポスターが並び、「今竹がこれらの資料類を参考にしながらデザインに取り組んでいたのではないかと思いを巡らせることができる」と、同館の枝松亜子学芸課長は話す。
西洋画の伝統に基づいた油彩技法の可能性を探求し続けている川村悦子。身近な風景や自然をひたむきに見つめ丹念に描くことで、草木が持つにおいや音が聞こえてきそうな臨場感を生み出している。作品を見た小学生が「作品に向かって歩き出しそうになっていた」と言うほどリアルに見える。時間の流れも感じられる。
関西を拠点に国内外の版画コンクールで受賞し現代版画史に足跡を残した木版画家・黒崎彰は「赤と黒のコントラスト」で知られるが、モノクロの初期の作品やリトグラフを含めた多面的な創作の軌跡を同時代の版画とともに紹介する。黒崎が活躍した1960年代ごろから版画は多様になっており、その軌跡も感じることができる。