父親は、仕事ぶりが高く評価され、IBMへ転職することになりました。フェイブルマン一家はカリフォルニアへ引っ越すことに。サミーは学校を転校します。
「おい新入り、名前は?」
「サミー」
「そのあとは?」
「フェイブルマン」
「……ユダヤだな」
ユダヤ系の家族に育ったサミーは、新しい土地で差別を受けます……。
さまざまな映画をつくってきたスティーヴン・スピルバーグ監督が、映画監督になる夢をかなえた自身の原体験を描きます。
スピルバーグは自分自身として物語に登場する主人公をサミー・フェイブルマンと名付けました。ティーンエイジャーのサミーを演じるのは、ガブリエル・ラベルです。
スピルバーグは「サミー役を誰にするか悩んだ」と語っています。この映画で主人公をキャスティングすることが一番大変だったそうです。
「自分自身に“どこまで自分を知っている?”と問わなくてはならないからだ」(スピルバーグ)
一方、サミーを演じたラベルは「監督のモノマネはせずに、物語に身をゆだねて自由に演じた」と振り返りました。スピルバーグは「この子が次々とホームランを打ち始めてくれた」とラベルを絶賛しています。
映画づくりに没頭するサミーを応援する芸術肌の母・ミッツィはミシェル・ウィリアムズが演じ、科学者のやさしい父・バートにはポール・ダノが扮しています。
自伝的な映画をスピルバーグ自身が監督として撮っています。実際の撮影に入るとスピルバーグの感情に予想外のことが起こったそうです。スピルバーグは「自分と被写体の間に距離を置こうと思った。だが、それは難しかった。物語は絶えず私を現実の記憶に強く引き戻すからね。実際に自分の身に起こったことを再現し、それを目の前で見ることは、今までにない耐えがたく奇妙な体験だった」と明かします。
「プロフェッショナルであり続けようと自分に誓った」(スピルバーグ)
スピルバーグが子ども時代に撮った映画として、西部劇や戦争映画が登場します。こうした劇中映画もスピルバーグ自身が撮影したということです。