喫茶店で「ミーコーちょうだい」という注文を聞いたら、どんなメニューを想像しますか? 実はこれ「ミルクコーヒー」のことなのです。関西、とりわけ大阪ではアイスコーヒーのことを「冷コー(レーコー)」と呼ぶ文化がありますが、「ミーコー」は兵庫県の一部地域や神戸市の喫茶店が発祥。局地的文化という背景もあり、ミーコーは初耳という人も多いのではないでしょうか。
しかし筆者は大阪の喫茶店で、メニューに“ミーコー”が記載されているのを発見しました。中崎町に店を構える『ニューMASA』(大阪市北区)です。店主の片牧さんにお話を聞きました。
同店の歴史は、1982年から中崎町に根付いていた喫茶・ラウンジ『正(まさ)』からスタートしています。当時の常連客だった片牧さんは店が無くなるという話を聞き、引き継ぐ形で2011年に『ニューMASA』としてオープンさせたのです。
オシャレな古着やカフェの店が並び、“昭和レトロ”を楽しめる街として若者から人気を集める中崎町。同店は、若者が昭和文化に触れられる場でありつつ、昔ながらの「喫茶店」を求める年配の客からも憩いの場として親しまれています。
「前店主時代、メニューには普通に“カフェオレ”と書かれいましたね。ただ、年配の常連はミルクの量を独自の分量でオーダーする人が多かったと記憶しています。当時の従業員さんが今もお客として通っていますが、その人も『ミルク多め』とオーダーします」(片牧さん)
片牧さんがニューMASAをオープンさせる際、こだわったのは“昭和感”。そのため店名にも「昭和喫茶」をかかげ、メニューにもあえて昭和テイストを取り入れています。その一環として「珈琲ラテ」や「珈琲カプチーノ」とは別に「みるく珈琲(ミーコー)」というメニューを作りました。
「実はミーコーという言い方が兵庫県発祥だとは知らなくて。私の出身地である姫路では普通に『ミーコー』が使われていたんです。全国的には名古屋が有名ですが、姫路もモーニングが豪華で色濃い喫茶店文化があります。その影響かもしれませんね。昔からよく聞いていた言葉でなつかしさを感じ、昭和っぽさもあるということでメニュー名に採用しました」(片牧さん)
片牧さんの店に通う昭和生まれの年配客たちは、実際のところミーコー(ミルクコーヒー)をオーダーする人は少ないそう。むしろ、ホットコーヒーやアイスコーヒー、アメリカンコーヒーを注文することが多いといいます。
「それでも、たまに60代くらいのお客さんが『おお、ミーコーって昔言うてたな』と懐かしそうに反応してくれます。また、中崎町を散策しに来るような若いお客さんは、ちょっと恥ずかしがりながらも『ミーコー』とオーダーし、昭和文化を楽しんでくれているようです」(片牧さん)