【杉山さん】 ご飯を保温するための魔法瓶のおひつ、電子ジャー、炊飯ジャー、ホーロー鍋、冷蔵庫、当時は一家に一台あったライサー(レバーを引くと一定量のお米が出てくる)にも花柄をデザインしていました。また、魔法瓶だけでなく家電製品にも花柄がデザインされるようになっていきました。
――流行はいつごろまで続いた?
【杉山さん】 花柄のデザインが特に多かったのは、1970〜1980年代の終わりごろまででした。90年代になると黒や白を基調としたシンプルなデザインが人気になり、市場の大半を占めるようになってきました。しかし花柄がなくなったわけではなく、今も一部商品は残っています。
――どのような層が購入していた?
【杉山さん】 新婚さんやお子さんのいるファミリー層が最も多かったです。現在は当時を懐かしむ年配の方や、近年のレトロブームもあって若い方が購入されることも多くなりました。昨年復刻版を販売したのですが、当時を知る方世代の方々だけではなく、若い方々にも好評でした。
――当時、人々にとって花柄商品はどのような存在だった?
【杉山さん】 当時の人々には「食卓に華やかなものを飾りたい」という傾向がありました。生花を食卓に置きたいけれど、値段が高かったり、すぐに枯れてしまったりする。その代わりとして花柄デザインのポットや鍋などを食卓に置くことで食卓に華やかさを出していました。高度経済成長期とは、食卓の華やかさを楽しむ時代でもありました。
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当時は花柄商品の種類も多く、各家庭ごとの好みに合った花柄が食卓を彩っていたそうです。高度経済成長期真っ只中のいそがしい毎日であっても、食卓を華やかにする遊び心を持つことは人々にとって重要だったのかもしれません。少しの遊び心を持ち、食卓に彩りの“花柄”を足すことで気分転換してみるのもいいかもしれません。