女子サッカーのプロリーグ、WEリーグの2022-23シーズンは、約2か月のウインターブレイクを経て、3月5日から再開。初代女王のINAC神戸レオネッサは、5日の第9節、マイナビ仙台レディースとのアウェイ戦で2-1と勝利して、首位の座をキープ。約1か月前に行われた皇后杯(皇后杯 JFA 第44回全日本女子サッカー選手権大会)決勝で大敗したときのショックを一掃した。
日テレ・東京ヴェルディベレーザに0-4とまさかの大敗を喫し、皇后杯では悔しい準優勝に終わったINAC神戸。そのショックからいかに立ち直れるかが、リーグ戦再開初戦のテーマの1つでもあった。
「皇后杯決勝でやられてしまって、メンタルがもちろん落ちたときもあったが、自分たちのサッカーをもう一度取り戻して、原点に返って、新しい選手も来たなかで、チーム一体となって戦いきろうということを伝えた」と述べたのは、INAC神戸の朴康造監督。
その思いに早速応えたのが、今冬に加わった新戦力だ。セレッソ大阪堺レディース(4月からセレッソ大阪ヤンマーレディース)から期限付き移籍加入したDF筒井梨香選手が、開始3分、フリーキックにヘディングであわせて先制点を記録。守備でもセンターバックの中央に入り、ディフェンスラインを統率した。また、同じくセレッソから期限付き移籍加入したなでしこジャパン(日本女子代表)DF小山史乃観選手も、「左サイドでハードワークしてくれた」と朴監督が称えるように、安定したパフォーマンスを披露した。
ただし、この試合では、1-0で迎えた後半、マイ仙台に同点弾を許すなど、「自分たちが思い描くようなサッカーができなかった」(朴監督)。それでも、「今日に関しては交代で入った高瀬(愛実)選手(※「高」=はしごだか)や箕輪(千慧)選手がいろんな役割を果たしてくれた」と指揮官も称えるように、途中出場の2選手がチームを活性化。そして、終了間際の89分、コーナーキックのこぼれ球を、高瀬選手がジャンピングボレーシュートで押し込み、これが決勝点となった。「1つ勝ち切れたことで、次へポジティブに向かえる」と、朴監督はこの1勝の意義を語った。
高瀬選手は、これで今シーズン5得点目。三菱重工浦和レッズレディースのFW菅澤優衣香選手と並んで、リーグの得点ランキングトップタイにも名を連ねた。浦和L戦に続き、今シーズン前半の大事な上位決戦で劇的なゴールを決めた背番号11は、「(得点が)取れるときは取れるのかなという感覚で正直いるのですが……」とはにかみつつ、「昨シーズンは守備に回る時間がけっこう多かったが、昨シーズンよりは(今シーズンは)チームとして攻撃的なサッカーをするようになったので、(その分)ゴール前にしっかりいれるというのが、得点が生まれている要因かなと思う」と、チーム全体のアグレッシブな姿勢が結果につながっていると試合後に述べていた。
「やっぱり皇后杯のショックは大きかったですし、中断明けからのトレーニングでも『(気持ちを)切り替えていこう』というところは意識はしていたが、うまくいかないと、敗戦にちょっと引きずられている部分が若干あったのかなというのは正直あった」と、リーグ再開に向けての準備期間を振り返った高瀬選手。それでも、「その敗戦からチームとしても準備もしつつ、各々が準備してきたことがすごく多かった。各々が感じて改善しようというところが、日ごろの練習からずっとみんなから感じることができたので、それが今日(マイ仙台戦)のゲームには出ていたのかなと思う」と、リーグ戦再開に向けた取り組みの成果を強調した。
その高瀬選手の決勝点について、元Jリーガーの近藤岳登が、自身がパーソナリティーを務めるラジオ番組『カンピオーネ!レオネッサ!!』(ラジオ関西)で、「執念というか、『ゴールを決めたい』という思いが、あのワンプレーにすごく表れていたなと感じた」と絶賛していた。
また、今回の試合のなかでは、髙瀬選手とともに途中出場で奮闘した箕輪選手についても、番組のなかで触れた近藤。箕輪選手の「練習から頭を使って考えながらサッカーをしている」という話しを受けて、「成長という意味でいえば、すごく素敵なことを考えながらサッカーをしている」と、まもなくプロ2年目に突入する19歳を称えつつ、「サッカーでは考えすぎてわけがわからなくなるときもあるものなので、INACみたいにいい選手がたくさん揃っている状態であれば、『今、自分がしたら(相手にとって)一番怖いプレー』というのも考えながらやっていくのもいいのでは」とアドバイスを送っていた。