兵庫県の西部に位置する西播磨地域には、多くの山城があります。相生市にある『感状山城』は感状山の尾根上に築かれた山城で、標高は301メートル。約1300年前に築かれたもので、周辺には石垣の跡も確認できるなど、長き歴史を刻む場所です。
今回は、中世城郭研究家の木内内則(きうちただのり)さんのガイドによる登山時の情報を交えながら感状山城についてご紹介します。
これまでに、約300以上もの縄張り図や山城復原図を自身の目で調査しながら描いてきた木内さん。木内さんによると、どこの山城も登りきるのに30分以上は掛かるようになっているとのこと。
「ほとんどの人は、30分も登れば息切れを起こす。だから山城はそういう場所にある。簡単に登れてはいけないんです」(山内さん)言葉で聞くと当然のことですが、実際に登ってみると、その言葉の意味が実感をもって理解できます。
感状山城では、1985(昭和60)年度から3か月かけて発掘調査が行われ、その結果、城や石垣といった建造物の遺構が複数発見されました。例えば、軒先から落ちる雨を受け止める「雨落溝(あまおちみぞ)」。見ると、どこからどこまでが屋根だったのかが分かります。また、柱の礎石からは、どういった形や大きさの部屋だったかがうかがえるとのこと。木内さんは、メジャーを用いて礎石の間隔などを自らも調査し、図面に描きます。
山城の痕跡が多く残る山頂は、景色も美しく、空気もおいしく感じられることから、登り切った達成感はひとしおです。ただ、このような素晴らしい場所だからこそのちょっとした悩みもあるのだとか。
実は、登山者が、景色を楽しみながら休憩するためにと、それとは知らずに礎石動かしてしまうそうです。一度動かしてしまうと、今後の調査で研究者が困ってしまいます。「登山しても、決して動かさないでください」と、木内さんは訴えます。
そんな山城にはロマンが詰まっています。ただ登るのではなく、マナーに注意しながら散策して学び、知識を得るのも楽しいのではないでしょうか。昔から受け継がれる優美な景色と共に、歴史を体感しに感状山城へ登ってみてはいかがでしょう。
【書籍『中世播磨250の山城』の紹介】
中世城郭研究家・木内内則氏が、300か所以上の播磨の山城に登り、メジャーで測量した結果をもとに描いた、縄張り図や建物の復原図を掲載した、山城マニア垂涎の図書です。現在、改訂版を販売しています。2018年に出た初版の内容に、西播磨の山城復活プロジェクトのために新たに描いた「利神城(りかんじょう)」「篠ノ丸城(ささのまるじょう)」の想像復原図などが追加記載されています。詳細はこちら