「ボーダー 二つの世界」で注目を集めたアリ・アッバシ監督が、イランで実際に起きた事件をもとに描くクライム・サスペンス、映画『聖地には蜘蛛が巣を張る』が、来たる4月14日(金)に公開。
カンヌ国際映画祭女優賞を獲得した作品として、公開前ながら話題を呼んでいます。
2001年、イランの第二の都市・聖地マシュハド。ここへ、フリージャーナリストの女性ラヒミが事件取材のためにやってきます。ここでは娼婦が次々と殺害される事件が起きていました。
ここ半年間、犯人は、みな同じ手口で女性を殺し、同じ地域に死体を遺棄しています。狭いエリアで連続して事件が発生していますが、犯人が捕まっていません。
ラヒミは、地元の記者シャリフィに会います。犯人は事件を起こしたあと毎回、この記者に自ら電話で通報していました。
「俺の話をメモしろ。街中の娼婦を始末してやる。終わるまでやめない」
街の人たちは連続殺人鬼を“蜘蛛殺し”と呼んでいて、新聞は連日報じています。犯人は「街を浄化する」という犯行声明を出していました。市民の一部には「蜘蛛殺しは汚れた女たちを聖地から排除している」として犯人を英雄視する空気がありました。
ラヒミは警察の捜査責任者ロスタミを取材しますが、捜査に消極的な様子です。そこで、今度は聖職者の判事に会おうと裁判所を訪ねます。判事もまたラヒミを警戒しているようです。
判事はラミヒに言います。
「なぜこの事件に関心を? 君たちの仕事は社会に恐怖を広げ混乱させることではない」
その言葉にラヒミは答えます。
「恐怖だなんて。人々はすでに怖がっています」
そんなラミヒに判事は忠告。
「この事件を煽るように報じるのは許さない。態度に気をつけたまえ」
警察幹部も裁判所の幹部も、高圧的な態度でラヒミに接しました。事件を隠し、犯人をかばうようなムードをラヒミは感じます。ラヒミはかつて首都テヘランで新聞記者として活動していた頃、ひどいセクハラ被害に遭って退職を余儀なくされ、フリージャーナリストとなったのです。